演劇集団円公演『死んでみたら死ぬのもなかなか 四谷怪談 -恨-』を観てきた。

桟敷自由席なので早めに行き、一番前の座布団をキープしたが、これがステージに近過ぎっ。
しかも開演直前になって、ステージから役者が降りて前を行き来すると前説があり、慌てて荷物を纏めたり、足を組み直したりw。

江戸から明治の時代。夫・伊右衛門と姑、その仲間たちの陰謀により、無実の罪を着せられ非業の最期を遂げた女・お岩が、怨霊となって復讐する話。
ご存知『四谷怪談』をベースに、韓国の著名な演出家・韓泰淑が書き下ろした全く新しい戯曲を、森新太郎が演出した。
お岩は心優しく賢い妻だったが、夫が悪い人間にたぶらかされ悪事に手を染めようとするのをほおっておけない。それを煩わしく思った夫は自分の母や仲間たちと共謀、お岩を最も残酷な手で葬ろうとする。死に直面して真相を知ったお岩が、悲壮な声をあげて嘆き苦しみもがくサマが痛々しい。

冷え冷えとした空間に緊迫感が張り詰め、役者の熱気が夥しく広がり、役者の表情や息遣いがくっきりと伝わってくる。その静寂を破るのが、太鼓の音だ。時に激しい雷鳴に、時に奇妙な雨音で、リズミカルに作品世界を無限に構築する。
劇中ずっと定位置に置かれた大太鼓は、暗闇でも白く不気味に光り、月に見えたり黒い井戸にも見える。だが赤い閃光の中で噴煙と砂地獄にかき消されると、原爆のようにも映ってドキリとさせた。
お岩の焼け爛れた顔、お岩の胸に隠された傷痕、そして頭上から振り落ちる砂と毒。どれもが原爆をイメージさせてならない。

「恨」に込められたお岩の絶叫は、怒りと哀しみと虚しさ、そしてやるせない無念なのだろう。お岩の胸の傷痕も、好奇と嫌悪の対象でしかなく、彼女の心に隠された闇を誰も理解しようとはしなかった。
お岩といえば「うらめしや」だが、韓国では「恨(ハン)」という言葉に、とりわけ思い入れが強く、一般に深く浸透している感覚だという。先日観た『広島に原爆を落とす日』の主役の男の名も恨一郎(ハンイチロウ)だった。つかこうへい氏も「恨」という言葉に、たくさんの思いを込めたのだろうか。
人の業が有るかぎり、恨が無くなることはないだろう。長崎に原爆が落ちた日に、この舞台を観たことは意味があるのかもしれない。

お岩の朴路美は、声音を自在に使い分け、時に美しくも可愛らしい妻女に、時に復讐に執念を燃やす悪鬼として、繊細に大胆にのびのびと熱演。刃をすり抜ける怨霊の動きも軽やかで、男にのしかかられたりのしかかったりする体当たりの演技。
貞淑なお岩がすっかり変貌し、巨体の男たちを手玉にとる。この辛辣なパワフルさは爽快感を伴って、「死んでみたら死ぬのもなかなか」と言わしめていく。。
『孤独から一番遠い場所』といい、今回も路美さんの情熱が勝ったようだ。

伊右衛門の吉見一豊は、見た目の誠実さから、悪辣で小心者で欲深い男へと変貌するサマが見事だ。武士の誇りと執念がみなぎった力強い殺陣には、思わず引き込まれた。
宅悦の井上倫宏は、クールで不敵な中に中性的な淫乱さを纏ってミステリアス。伊右衛門との妖しい関係は謎のままw。
石田登星、吉澤宙彦のいつものメンバーに、野村昇史、原田大輔が加わり賑わう。
お熊の高間智子の狡猾ぶりもユニークだ。

パンフに団扇が付いてるが、表が路美さん、裏がエド(@ハガレン)になってるのが一興w。
桟敷座布団席に2時間近く座ると、やはりお尻が痛くなった^^;。

演劇集団円の次回公演は、待ちに待った平光琢也の演出『シーンズ フロム ザ ビッグ ピクチュアー』。とりあえず初日と楽日を観劇予定。
路美さんの次回公演『33の変奏曲』も観劇予定。黒柳徹子さんと路美さんは『レティスとラベッジ』以来。今度は黒柳さんの娘の役だ。
演劇から朗読へ。夕方からは『夏の夜の夢語り』へ行ってきた。

お目当ては本日出演の加藤和樹。前日出演した三木眞一郎の役どころだが、どうして三木さんと和樹が日替わりになったのかが疑問^^;。三木さんは声優だが、和樹は声優じゃないのに。ロビーにはその三木さんへの花壇が多く目立っていた。
共演する面々も歌舞伎だか狂言だかの役者陣で、錚々たる顔ぶれ。中塚皓平はDIAMOND・DOGSなので、和樹とは一番近い人だろうか。この8人のメンバーだからと和モノ劇を想像していたが、イギリスを舞台のコッテコテの洋モノ朗読劇だったw。

出演は、市川段治郎、舘形比呂一、初風緑、岩崎加根子、市川笑也、市川猿琉、中塚皓平、加藤和樹。
休憩を挟んでの二部構成。リーフレットにパートごとのタイトルが20以上も並び、次々と朗読が展開される。
二階席に人はおらず、一階後方もガラガラ^^;。
ステージに一列に並べられた椅子に座ったり立ったりの朗読劇だが、思ったよりも役者が動いたり、通路や二階バルコニーも使われたりする。端の席よりも、中ほどの席のほうがステージを見渡しやすい。幸いにも真ん中の席だったので堪能できた。

PART1: 虚ろな王冠 構成:ジョン・バートン
皆さん、黒や赤を基調としたスーツなどを着用。初風さんは肌を出した赤いロングドレス。
イギリスの王室にはあまり馴染みがないので、色々出てくる王や王妃の名前と時代背景がさっぱり結び付かない。リチャード○世とかヘンリー○世とかどれも同じみたいで混乱しそう。内容も多くの作品からの抜粋で、物語性には少々欠ける。昼の部でも寝ていた方も結構多かったそうで、かくいう私も瞼が重くなり虚ろにw。
進行するにつれて、役者の名前と顔がようやく一致してきた。
段治郎さんは滑舌明確で男前な声、まるで萬斎さんのような喋り方。舘形さん、猿琉さんは女形なのか、高音でソフトな喋り方で女性役も兼ねる。中塚さんは一番若い役どころで、女性もキュートに演じる。岩崎さんは豊かで味わい深い喋り。初風さんは色っぽさを漂わせてしなやか。
和樹も出番は思った以上にあった。マジメでユニークな青年役がメインといったところか。滑舌にはちょっぴり不安も残るが、以前と比べると余裕と柔らかさがあり、メリハリのある喋り方に成長した。ミスも殆どなかった。
和樹の朗読で注目は、後半のチャールズII世のモノローグ。煙草を返した時に下半身にピシャリとされ、あられもない声を出したり。饒舌をふるいながら乾杯マイムをしたり。他の役者さんとの絡みが新鮮で面白かった。

PART2: 歓喜と悔恨 構成:テリー・ハンズ
皆さん、今度は白を基調としたスーツなどを着用。岩崎さんや初風さんも白のロングドレス。
「愛とは?」で、各々通路から登場し説明したりと客席をわかせる。こちらの通路には和樹が! 間近で拝んで得した気分v。
PART1と違い、こちらは身近でちょっぴりアダルトな内容なので実に面白かった。
和樹の見どころは、ロックの音楽に合わせた「欲求不満」の吐き出しと、ベッドで女を抱く前の蜜事。和樹の弾けたような喋りっぷりに、お客もニヤニヤしたり爆笑したり。和樹の欲求不満が続く中、他役者たちのステップやエグザイルが愉快。
段治郎さんと初風さんの夫婦の○○○○シーンが言葉だけで表現されてドキドキ。周りで興味深そうに見守っていた男性役者が、絶頂後に一斉に体が萎える様子が可笑しいこと。
イスの並べ方が丸いので、イス取りゲームの雰囲気で役者がイスを変えていく。全員が一斉に立ち上がったり、また座ったりと細かな技法も面白い。

カテコはなんだかんだと3回ぐらい。通路から演出の青井陽治も出てきて拍手を送り、またすぐ客席に戻っていった。
朗読の題材にまだ考慮すべきところはあるが、演出家の力も発揮され、品のある豊かな空間に作り上げていた。様々な分野で活躍される役者さんとの共演で、和樹も勉強になったし新たな可能性を見い出せたと思う。

来夏もまたこういう朗読劇が企画されるのだろうか。
今回の三木さん版も観たかったし、他の声優さんの活躍の場を広げるのなら期待したいものだ。

終了したのは20時。和樹仲間と一緒にそのまま渋谷の映画館へ。昨日公開の和樹のレイトショーを観るには充分な時間だ。
infiniteプロデュース『Good+Will...中野支店』を観てきた。

先日のイベントでハッチが絶対面白いって言ってたから、どんなものかと興味w。
ネットでチケットを取ったが、最前右手とステージにかなり近すぎる席で緊張と期待。
バッジが付いたり、パンフに袋がついたりと嬉しいサービス。

日雇い労働者派遣会社「グッドウィル」中野支店を舞台に、個性あふれる労働者や支店長らスタッフの日常を描く、社会風刺コメディ。
実在の企業を題材にした虚構劇だが、出てくるお札が本物だったり、労働者たちの過酷な状況の一面が見えたりで、どこかリアルチック。
作・演出を担当した御笠ノ忠次の手による「Goodwill」シリーズが過去にもあるようだが、そちらは未見。今回はそれらの集大成のようだ。
infiniteによる舞台も初見だが、『bambino』や『金色のコルダ』に出ていた渡航輝が一昨年立ち上げた団体だというのも、最近知ったぐらいだ。

稽古スタイルは“エデュード”というアドリブで進められたそうだが、そのおかげで、舞台は実にノリがよく活気にあふれ、自然な会話劇のような作りになっていた。会話の途中で言葉が詰ったり出てこなかったり、怒鳴り声が頂点に達する前に急にしぼんだりと、人物の本物の息遣いが伝わって、心情に傾倒しやすくなる。
役者ひとりひとりの個性や力量もいかんなく発揮されそう。こんな一面があったのかと、新しい魅力に触れることもできた。

スピーディでノリのいい展開で、確かに面白かった。だが笑いとギャグの中に、冷めた客観的な視線とほろ苦さ感がある。
ステージにあるブルーカラーとホワイトカラーの境界線。“データ装備費”という名の搾取。職を失った彼らに押し寄せる厳しい現実。社会や会社に対する憤りと哀しみが電話口で爆発させ、ただのハートフル・コメディに終らない可能性を残してくれた。
舞台スタイルの調子は、ひらり。空中分解さんの雰囲気に似ているかもしれない。なおさら役者の力と団結が必要となる。

森本亮治を観るのは『忍たま乱太郎』の土井先生以来。今回は面倒見がよくテンション高いが、ちょっぴりお馬鹿な可愛さを持つ男。
山岸拓生は『リバースヒストリカ』以来。こちらは豪放で人情味のある男。たくましくも達者な喋りっぷりだ。
昨日のStudio Lifeイベントでも名前が出た小野健太郎は、ヤル気なさげで仕事を怠けているような、華奢で頼りなげな風体。
八戸亮が得意の青森弁をのべつまくなしに発揮していて可笑しいw。天然でピュアで温かい男だが、ハッチの柔軟さが出ていて可愛かったv。
劇中は殆ど言葉を発せず表情や動きだけで表現、独特の存在感を放ったのが竹尾一真。ハッチとのコンビぶりが微笑ましい。竹尾さんは中尾隆聖さんの息子さんである。

瀬戸祐介は『テニミュ』以来だろうか。演技に広がりが出てきた。
紅一点の叶千佳が、クールな中にやわらかさと色っぽさがある絶妙な芝居で華やげる。
特筆すべきは、中島徹の弁舌豊かな芝居の上手さ。序盤の1シーンを一人で通し、巧みに芝居を牽引して嫌味なく盛り上げる。雰囲気が誰かに似ているなと思っていたが、ひらり。のマツさんだ!
渡航輝もクールな役どころで少々出番。オカマにキッスはネタか!?

終了後のカテコの時、渡さんが挨拶をした後、竹尾さんの音頭で、会場みんなで渡さんのお誕生日のお祝いコール。楽日と誕生日が重なったのは偶然らしい。ビックリしてかなり照れていた渡さんだが、拍手の中みんなにお礼を述べていた。
バースデーケーキを客席から運んできたのが、演出家の御笠之忠次さん。まだ若いが才能あふれる方だ。そのケーキを森本さんが渡さんの顔にぶつけるフリをしながらw、みんな仲良くハケて行った。
広島に原爆が落ちた日、舞台『広島に原爆を落とす日』の初日を観てきた。

一人の新聞記者が、戦時中の極秘文書と記録から抹殺された「犬子」という名の日本人の謎を追及していく中、戦争の真相と引き裂かれた男女の愛と共に、広島の原爆投下の真実が明らかになっていく。
故・つかこうへい氏が描いた歴史ロマン大作のリニューアル上演。

タイトルどおり刺激的で、狂おしくも切ない、けれど未来に向け希望を投げかけるような問題作である。
真珠湾開戦、大和撃沈、そしてドイツへの戦争工作など、すべて一人の男が関わっていたという、予想もしなかった展開が繰り広げられる。
いったいどこの誰が、どうして広島に原爆を落とさなければならなかったのか。アメリカと日本政府にはどんな密約があったというのか。

描かれたのはフェイクな歴史ではあるが、どこか本当ではないかと思わせるリアルさがある。それがまた怖ろしい。作品で発せられる嘘が嘘であるほど、人物に厚味が増し強烈な存在感を放って、心底の言葉をじわじわと本物の重さに変えていく。
結局のところ、歴史の真実なんて本当のところは分からない。分かったところで、過去を変えられるものでもない。だが歴史の中で置き去りにされた、人々の怒りや哀しみや嘆きややるせなさは繋いでいかなくてはならないだろう。
それにしても、戦争と対峙した男女のこだわりはこうも違うのか。男は信念と責任を貫くために死へ向かうが、女は愛と命を繋ぐために生を選ぶ。つかさんは男気あふれる方だったそうだが、かなりのロマンチストだったのだろうか。
もしこの世が女の主導で作り出されていたら、原爆というものは生まれてこなかったかもしれない。

主演の筧利夫は、記者の山崎と犬子恨一郎の二役だが、表裏の関係にあるようだ。殆ど出ずっぱりだが、とにかく長台詞に早口で捲し立てるパワフルさ。たまに台詞がこんがらがりそうにもなるが、ハギレのいい台詞回しは快適だ。
山口紗弥加と仲間リサも表裏の役どころだが、序盤は声が散って緊張感があったが、進行するにつれてのびのびとした演技力を発揮。

お目当ての大口兼悟はアドルフ・ヒットラー役。しかもホストでキューピットでセクシーなヒットラーv。こんなヒットラー、見たことない!w ユダヤ人を殺戮する理由も述べてたが、イケメンだと説得力があったりするw。兼悟がパンフで2010年の日本について述べていたが、シビアでマジメな考えに共感した。
馬場徹は逆に、恨一郎を信じて慕う誠実な部下の平沼平八郎役。長台詞や重要情報も結構話しており、若者代表としての情熱や爽やかさを表現する。
トロイは二ヶ国語を操って、様々な外人を兼ね役。背が高いのでよく目立つ。台詞や声に温かみがあるので好感がもてる。

重厚なストーリーながら、ステージはスピーディで娯楽的。
ナツメロの響きが柔らかさを伴って懐かしい。歌あり、ダンスあり、アクションありで、若手の活躍も目覚しい。
全員のミュージカル風ラストには、思わず手拍子が出てくる。いかにもザッツ・エンターテイメントな衣装もステキだ。
金銀テープが客席にも舞い降りたが、どこか原爆の閃光のようにも思えた。

カテコは3回。最後に筧さんが天に向かって呼びかけた。
「つかさん、初日の幕が開いたよ」
つかこうへいさんの追悼公演として、ロビーにはつかさんの作品ポスターがたくさん飾られていた。

では、原子爆弾を作ったアメリカ側はどう考えどう生きたのだろう?
劇団昴の新作『イノセント・ピープル』が今月下旬から上演される。
井上ひさしさん追悼公演『黙阿彌オペラ』を観てきた。

前売券が完売になるほどの盛況ぶりだ。
公演期間、当初は井上氏の書き下ろしで、沖縄を舞台にした三人芝居『木の上の軍隊』を上演する予定だったという。だが井上氏が病で執筆できなくなり、ご本人が病床から代わりに上演を希望した演目が『黙阿彌オペラ』だったとか。『木の上…』に出演予定だった三人も出ることで、井上氏の遺志を受け継ぐかたちとなった。
ロビーには、井上氏のお写真と共に、『木の上…』用に和田誠氏が描かれたポスターと三人のスチール写真も飾られていた。

幕末から明治にかけての動乱期。狂言を書く劇詩人(のちの黙阿彌)が、小さなそば屋で知り合った江戸の庶民たちと株仲間を組み、そば屋の娘の成長を願いながら、ひもじい生活から脱却して儲けようと騒動を繰り広げる話。
人生のどん底と飛躍をうたった、経済とオペラの物語のように見えたw。
現代にも繋がる社会情勢や儲けのからくりも出てきて、笑いの中にも痛烈に世の中を皮肉っている。
だが語りかけるその“日本語”は、あくまで柔和で穏やかで美しい。ジンとする言葉、グっとくる言葉、ホッとする言葉がたくさん詰った戯曲であった。

主人公の新七さんは、井上ひさしさんご自身のことでもあったようだ。江戸歌舞伎に、日本語に命を賭けてきた新七に、西洋にならってオペラを書くように命が下る。だがそんなに容易く西洋ものに飛びついていいのか、オペラをホントに聞きたい日本の見物衆がいるのかと新七は問う。
演劇人は常に見物衆に目を向けた芝居を作っていかなくてはならない。政治家も官僚もそうだ。民衆に目を向けた政治を施行していかないと、いずれそっぽを向かれて失敗するだろう。
劇中に出てきた「ご恩送り」がとてもいい言葉だ。観る人のことを第一に考えてくださった作家・井上さんの思いを受け止めたように思った。

『ムサシ』観劇中に取ったチケットだったので、席は中列のまたもや下手端側。さぞステージは観にくいだろうと思ったが、とんでもない!
そば屋店内の広い空間を、役者たちがひっきりなしに喋りながら動き回る。決め台詞も見得をきるのも観やすい真ん中。飽きさせないように、ちゃんと観客のことを考えた動的空間。大らかでのびのびしていて、それでいて細やかでスキがない演出。さすが栗山民也氏だ。アノ『コルダ』と比べながら、天地以上の大差がある演出には心からうならされた。
暗転中は着替えなどで少々長く感じられるが、苦にはならない。休憩挟んで3時間半もあったが、後半は特に集中できてあっという間だった。

劇中では28年間の時が流れ、暗転の度に推移する時間に合わせ、役者もどんどん着替えていく。台詞中で何年経ったか表現されるので、自ずと頭の中で人物の年齢も計算してしまうのが妙。
役者たちみんな、のびのびと楽しそうにやっているのが伝わってくる。
新ちゃんこと新七の吉田鋼太郎は、さすがに達者で逞しく、品のある色男風情な中年時代も味わい深い。ゴロちゃんこと五郎蔵の藤原竜也は、登場時は『アリエッティ』のスピラーのように見えたがw、豪放でお馬鹿でテンション高い役どころがとっても新鮮。
北村有起哉、大鷹明良、松田洋治の三人は、善良そうに見えても胡散臭そうで面白い。ことに松田さんは劇中で藤原さんを「アニキ」と呼び、何度か抱き合う場面もあって、色んな妄想を生み出してくれたw。
極めつけは熊谷真美の二役で、怪演を超えた愉快な芝居には元気をいただいた。

「すべてはふりだしにもどる」という某アニメの言葉が浮かんでくる内容でもあるw。元の木阿弥には見えるけれど、その間に培った経験や他者との絆は確実に人間を成長させてくれる。赤ん坊は誰もいつかは、老人へと還ることにもなるのだから。
お蕎麦が食べたくなる舞台でもあったw。
パンフは、稽古用と舞台用の写真付きで2種。若い人は稽古用を選んでいたような気がする。

来年の子供の日には、山形に「井上ひさし未来館」が開館する。井上さんからの「声」を語り継いでいく場所のひとつになるようお祈りしたい。
ネオロマンス・ステージ『金色のコルダ』ステラ・ミュージカル夏公演の東京千秋楽を観てきた。

さすがに中程の列まで埋まっていたが、後方席はガラガラで、満席とはいかなかったようだ^^;。
それにしても楽のお客さんのノリのスゴイこと! オープニングが流れると幕が開く前から拍手の嵐。舞台中でも各々の歌が終わる度にいちいち拍手が起こり、いいかげんウザ過ぎっ^^;。役者は嬉しいだろうが、長い拍手にかき消されて、歌の後の肝心の台詞が全然聞こえない。役者も拍手が終わってから喋る融通もない。舞台を盛り上げたいのは分るが、少しは周りの迷惑を考えて拍手の止め時を考えて貰いたい。
でもこうした熱烈なファンのおかげで、このステージも支えられているのだろう。音楽が結ぶ“絆”という点では、キャストと観客がリアルに結ばれているのかもしれない。

上手側に集中したヘタな演出について先日書き散らかしたが、今日観たら若干改善されていてビックリした。火原のソロと、香穂子と月森のデュエットが真ん中を軸にしていて観易くなっていた。これはアンケで散々クレームを付けた成果か!?w ともかく空間の使い分けに不満を持っていたのは、私だけではなかったようだ。

岡本あずさの日野香穂子はやっぱり好みだ。森さんより足が細いし、歌声が透き通るようで綺麗に高音が出せて不安感がない。それに芝居が上手く、感情表現がとても豊かだ。だから森さん版と違って、今回も香穂子の心情に寄り添えてグっとさせる。前回DVD収録されなかったのが残念だが、今回も岡本さん版だけ観ればよかったかな。でも今公演中、体調を崩した岡本さんの代わりに森さんが出演した回もあったそうで、本人も反省しきりだったようだ。確かに香穂子とリリ以外は代わりはいないし、役者にとり体調管理は重要。今後の作品へのいい勉強になっただろう。

でも岡本さんは背があるので、月森が並ぶとほぼ同じ背丈になるのが惜しい。三上俊があと5センチ背丈があったらなぁ。ミカシュンは頬がこけて春公演よりも痩せていたのにようやく気づいた。役作りのためだろうか。春よりも歌声が若干パワー不足なのが気になる。疲れなのか、エンディング告白を控えて緊張していたのだろうか。
楽最大のハプニングは、月森が香穂子の指を巻くための赤いタイがなかなか取れなくて、シャツからムリに引っ張ったため、襟が上がってマイクのラインが丸見えになったこと。あまりに情けない格好になった月森に観客からも笑いが(^_^;)。そのまま芝居が続けられたが、一緒にいた香穂子も土浦も笑いを堪えていたに違いないw。ほんの2~3分のシーンでよかったよかった。
土浦も頬がこけていて精悍さが増していた。高橋優太は先日よりは声が出ていたようだ。
火原の吉野晃一は声がよく出ていて歌も安定感があるが、やっぱりもう少し痩せて背が欲しい。
逆に志水の小関裕太は春公演よりも背が伸びたようなw。
柚木の川村聖斗の演技は着実に進化しているようだ。火原と柚木のデュエットは挿入場面に疑問だが、良い響きを聞かせる。
背といえば、リリの堀内まり菜も春公演と比べて背が伸びていたようなw。歌声も芝居もちゃんと上手くなっていた。

脇キャストの存在感だけはパワーアップ。
金澤先生の安倍康律のブリリアント・ヴォイスは本物で、この方の歌の後は私も拍手を送った。
吉原シュート、三好絵梨香の軽やかで柔らかい歌声は明るくさせる。
樋賀登ファンクラブも存在するそうだがw、舟見和利はギャグやノリも最高潮、お笑いを一手に引き受ける根性に拍手。
柚木親衛隊の三人娘は、Tシャツ作ったり撮影したりとアドリブがどんどん高まる。出場者の星座や血液型を唄ったり、場つなぎ的役回りをしたりと、どうしても『忍ミュ』くのいちトリオと重ねて笑いがこみあげるw。

歌詞は上滑りで表面的だが、楽曲はやっぱり素晴らしいこと。たくさんのアレンジと美しく穏やかなメロディー。だから舞台が終わった後でも、耳にしっかり曲が残って良い気分にもなれる。音楽監督の村松崇継の才能があってこそ実現したミュージカルだ。
キャストや音楽と材料や素材が綺麗に揃っていても、料理方法に難があり、料理人が上手く料理できなければ良いものは生まれない。結局は、細切れなシーンばかりでキャラクターを描ききれなかった脚本と、アラと偏りが多く単調でつまらない舞台に仕上げてしまった演出のせいで、コルダのミュージカルは評価できない作品となった。とても成功したとは言い難い。

「きずな~コルダのテーマ」は名曲だ。カーテンコールのライト振りはさすがに賑やか。パープルを振っていたら、近くまで来た柚木が気づいてニッコリしてくれた。火原はいつもニコニコと気持ちイイ。みんなと一緒の振りも盛り上がる。

千秋楽なので、樋賀昇のMCで役者全員揃って其々挨拶。
話しながらつい涙を浮かべるキャストも少なくない。「絆」や「コルダ」の言葉に寄せて、カンパニーの素晴らしさを話し、この後に控える神戸公演への意気込みを述べる。斉藤レイが「再演も期待したいが、(神戸以外で)このメンバーでこうして揃うことはおそらくないだろうから目に焼き付けてください」と述べた。現実的だが否定しない。ミカシュンは劇中のハプニングについて苦笑と弁解。
岡本さんのリクエストで、もう一回みんなで振りをすることになり、コルダチームがまた客席へ散る。ミカシュンと優太くんはグルリとひと回り。音楽は流れなかったが、キャストと観客がまた絆で結ばれた瞬間だった。
昼公演の森さんが幕袖で、リリの山内さんが客席で観覧していたようだ。ここでカニリカ氏が客席後方から階段を駆け降りて、優太くんの手の導きでステージへ登壇。オレンジの服で派手。この人か…と冷めた視線を投げた。劇中の香穂子の台詞で挨拶をして、列の端へと移動。この方を観るのもおそらく最初で最後になるだろう(-_-;)。

幕が下りて、土浦の閉演アナウンスが流れても、アンコールを期待する一部観客からの拍手が途切れない。でも5分位間があってやっと場内アナウンスが流れ、結局再度のアンコールはなかった。この舞台にはこれぐらいが相応しいだろう。


そういや、岡本あずささんが出演したドラマ『タンブリング』のキャラ名も、日暮里、月森、火野、水沢、木山、金子、土屋と、『コルダ』キャラのように並んでいるw。木山メインの舞台のほうはどんな仕上がりなんだろう。

アニメやゲームの舞台化は果てがないようだが、次のネオロマ・ステージはどうなるのか。9月の『イナズマイレブン』は忍ミュみたいに化けることを期待。12月には何とあの電車のヤツも!? KENNにはそのまんま出て欲しいなw。
30-DELUX×電撃チョモランマ MIX『スペースウォーズ』東京アンコール公演を観てきた。

30-DELUXの3本目のMIX公演は、4都市で1ヶ月以上のツアー公演を経た『スペースウォーズ』。
5月は忙しくて観劇できなかったので、パワーアップされたアンコール公演は願ったり叶ったり。
30-DELUXのタイソン大屋と清水順二はお馴染みだが、ダンスユニットの電撃チョモランマ隊の4人はお初。今回のカンパニーによる合同企画ははたしてどんな化学効果を見せてくれるのか。
前説はいつもの通りタイソンさんと清水さん。ミチヨと馬面でコール&レスポンスw。

とあるレンタルスペースのスタジオで、ダブルブッキングされたダンスユニットと殺陣集団。互いに稽古場使用権利をめぐってひと騒動が起きるが、互いの内情が分るにつれて認め合い、思わぬ相乗効果が生まれていく話。
「スペースウォーズ」とは宇宙戦争という意味でなく、「場所取り合戦」のことだった!(笑)
殺陣とダンスがミックスされた新感覚ダンサブルアクションコメディ。確かに今までの30-DELUXテイストとちょっと違う、「見せる」エンターテイメントではあった。

中盤は5人の若手作家がコントを担当したオムニバス形式。これがまあギャグやダジャレ満載で内容らしい内容もなく、くっだらないことw。5人の中にはD-BOYSの「NOW LOADING」を書いたますもとたくや氏の脚本もあったが、アホらしい中にも熱いものが貫いているようだ。ヘロQでもお馴染みの小野真一がすべてを構成し演出も担当。
大の大人たちが、くだらない話にマジメに全力投入しているのが見どころか。タイソンさんとチョモランマ隊リーダーのQ-TAROさんが似た者同士w。EBATOさんは温厚な常識人として癒し担当。クールドライなOH-SEさんと、元カノネタのU-SAKUさんは女性人気がありそう。
前後の話には関連性や脈絡はなさそうだが、決着間際で暗転に入る半端さに呆然w。たまにやり過ぎネタや痛いネタがあってウンザリしたり、集中力が途切れて眠くなったりもした。

だがこれらの中味は、すべてラストの10分間のためにあった。殺陣やアクションとダンスの素晴らしき融合が一度に花開く。殺陣ダンスというとロックミュージカル『BLEACH』が思い出されるが、あれの数倍も激しく熱く完成度が高い。それまで彼らが披露したダンスやパフォーマンスにあまり力が入ってないように見えたが、すべてはこの本番のための前座だったか。汗を飛び散らせながら踊る彼らの本気の顔が、どれも人が変わったように男前で格好良く見える。あまりに迫力のあるエンタメを目の当りにして、鳥肌が立ちそうになるほど感動を覚えた(*^^*)。
ラストに近付いてもチョモランマ隊のダンスは安定感がありクールでシャープ。さすがに清水さんらは年齢的にも経験的にも疲れが出たのか、やや動きが重くなっているように見えた。汗の量も半端ないが、みんな頑張っていた。

桜塚やっくんの芝居と踊りを初めて観た。キレがあって上手い。スーツを着た男性仕様とゴスロリの女性仕様を見せてくれたが、男性姿でも下半身の華奢なこと。低く太い声と可憐な乙女声を器用に使い分けるし、声優としてやっても面白いかもしれない。
アミューズの平間壮一は、軟弱な役どころでプチ可愛いが、ダンスとなると人が変わったように激しく踊り捲ってビックリ。
折井あゆみも声の使い分けが凄まじいが、JuNGLEのボリューム感ある芝居もスゴイ。

日替わりゲストは、磯貝龍虎、北代高士、西山丈也のMEN+坊主ユニット。テニミュの千里&桔平&小春だが、素の格好だとちょっと趣が違う。磯貝くんと北代くんは先日の『八犬伝』以来。
てっきりトークだけの出演かと思いきや、中盤のドラマに何度か登場した後は、ゲストも一つのシーンを受け持つ。最初は3人でブレイクダンスを鮮やかに披露、磯貝くんがクルクル回り髪がハラリ。コントでは磯貝くん&北代くんのおバカコンビに、何度もツッコむ西山くんという図。地なのか素なのか、無邪気すぎる二人w。
前日は関智一&長沢美樹がゲスト出演だったが、彼らも踊ったり唄ったり小芝居を披露していたのだろうか。長沢さんが30-DELUXに客演していたのも懐かしい。

終演後、清水さんやQ-TAROさんの進行で、ゲスト3人から告知。西山くんや北代くんに比べ、磯貝くんは天然なのかw。手に書いたメモを読むのはいいが、日本語や言葉がヘンで、「ごろうそく」には苦笑ツッコミ。本編よりも磯貝くんのことで一番笑ったかもw。

終幕後、パンフ購入者はサイン会に参加できる。
今回の担当は、チョモランマ隊のOH-SEさん、磯貝龍虎くん、桜塚やっくん、清水順二さん。
OH-SEさんってちょっとtutiに似てるw。最前列の真ん中で観ていたことを指摘されて、こちらがビックリ。磯貝くんに『八犬伝』のことを言ったら、シャイな笑顔で握手まで。桜塚さんは目を見ながらニッコリお礼を言ってくれ、ご自分から手を出して握手をしてくれたりと気さくな人だった。清水さんからは舞台を何回見ましたかと訊かれたが、いつもクールな人やねんw。
次回は2011年5月の本公演。それまで長いこと。
劇団あかぺら倶楽部第34回公演『誰ガタメニ金ハ成…ル? Cash on Delivery!』を観てきた。

劇団あかぺら倶楽部20周年記念公演の第1弾。
原題『Cash on Delivery』は、イギリスの笑劇王レイ・クーニーの息子・マイケル・クーニーの作品。日本初演をしたあかぺら倶楽部が満を持して再演する。
その8年の間、この劇を別のカンパニーの別のタイトルで観たことがあったので、今回のあかぺら倶楽部上演ものを楽しみにしていた。

今回はあかぺら倶楽部の20年を詰め込んだ完全データホン【あかほん】が完成。あかぺら倶楽部初の公演パンフまで販売された。
しかし、あかぺら倶楽部にとって何より衝撃的だったのが、ずっと演出を手がけてこられた水鳥鐵夫氏が7月中旬にお亡くなりになったことだ。演出半ばでの突然のご逝去。ロビーに飾られた水鳥氏のにこやかなお写真に、寂しさが募るばかりである。

妻に内緒で失業した男が、社会保障省から2年間もお金を騙し取っていた。ところが調査員がやって来たので、間借人の友人まで巻き込み、何とか丸く収めようとするが、次から次へと邪魔者や関係者が雪崩れこみ切羽詰った状態になる話。
うそがうそをよび、うそとうそを重ねた結果ジタバタするという、あかぺらさんお得意の芝居スタイル。

犯罪人には違いないけど(刑法では10年らしい)、頭の回転の早く飄々とした弁達者のエリックに高木渉。エリックに脅されつつ、口車にのせられ片棒をかついでしまうノーマンに大西健晴。初演と同じキャストだが、あまりにハマっている。ハマリ過ぎて、二人の役を入れ替えたパターンも観てみたいと思う。
中村伸一、山口登、押田浩幸らキャストもハマっていて、安定したハギレのいい芝居。岡田佐知恵、今泉文乃がピリカラの強さで、確固とした信念の女性を演じる。
劇中でキャラ名がどんどん入れ替わるので、台詞でも混乱し少々つっかえる場面もあったが、それはもうご愛嬌というところか。最後のノーマンの格好を婚約者が見て卒倒する場面でもあれば、徹底したオチで面白かったハズ。

汗水流すことなく金を儲けて甘い汁を吸ったエリックは憎たらしい存在だが、精神的にも体力的にも翻弄されたノーマンがとにかく哀れでならない。最初のウソさえつかずクールにスルーしていれば、こんなに巻き込まれなくて済んだのに。脅迫されたとはいえ、彼の口車にのったからには、ノーマン自身も軽いゲーム感覚があったのだろう。人の悪賢さは善良さえ凌駕し、弱さは強さを超える。滑稽で愚かだがタフで無邪気な、人間の本質を追及したような話だ。

それにしてもイギリスの社会保障制度はスゴイ! 取られる金額も多いが、貰えるものは多岐に渡っていて細かいところまでカバーされている。妊娠中のマタニティドレス提供とか、長期間の失業保険に引越し手当てとか、日本ではまず考えられないだろう。給付するにあたってのチェックが適当だし、電話一本で死亡報告が受理される安易なシステムは酷いに尽きる^^;。結局は役所の怠慢な仕事のせいだと皮肉ってはいるが弱い。
今回も裕福な中流家庭のリビングが舞台だが、防音設計の部屋が多くドアが多い設定が、そもそも芝居を成立させている。ウサギ小屋の日本ならこんな話などできっこない^^;。

最後は妻にウソをついていたことがクローズアップされたが、今まで騙し取った金の返却はどうなったのかとか腑に落ちないことが多い。犯罪人はその道のプロというオチは某映画のようだ。とにかくワリを食ったのは、ウソをつかされ死亡させられたノーマンと酷い目に合ったジョージおじさんだろうか。悪人は罪を償うべき…という常識が払拭されるのが、この作品のキモだろう。
尤も、罪を犯した元死刑囚に金のかかった贅沢なツアーを提供する某政府もいるのだから、悪いことをしてもお金が配達されることもあるのだろう。まさに今の現実こそが、Cash on Deliveryそのものなのだ。悪人に渡すために善人は税金を払ってるんじゃないゾ!(~_~)


終演後、あかぺらさん初のアフタートーク。
代表の大西さんが【あかほん】を手にして司会進行。過去の作品での“扉”の失敗談やハプニングが出演者の口から語られ、懐かしくも可笑しかった。
『金色のコルダ』ステラ・ミュージカルの夏公演を観てきた。

3月の春公演から約4ヶ月。銀座の劇場に舞台を移しての再演となる。
それにしてもコーエーで求めたチケット席番のヒドイこと。あれほどコルダの舞台は下手側をムシした演出だと分っていたのに、届いたチケットの席はみんな下手側の端ばかり(-_-;)。コーエーは下手しかチケット枠がないのか!? 二度と舞台チケットでコーエーは使うまいと思った。

学院のコンクールメンバーに選ばれた普通科の香穂子が、コンクールや練習を通して、普通科や音楽科の枠を超えた仲間との絆を深め、音楽の楽しさを知っていく話。
初演と比べて、ナンバーが増えているし、歌や台詞や場面が増えたキャラもいた。初演では月森サイドが目立っていたが、今回はデュエットが増えた土浦や、チェロを弾かせるなど志水との関係にも注目させる。庄司や間山などメンバー以外の事情や話も膨らませる。通路ばかりかバルコニー席まで使用したりと、大らかでより深味のある世界観を目指したようだ。見た目は確かにパワーアップしているかのように感じる。

だが焦点がボヤけて全体的に散漫とした印象が拭えない。テンポの悪さも気になる。脚本や演出をちょこちょことイジくったせいで、かえってつまらない舞台となったように思う。初演で感動した場面が、さっぱり胸をうたない。
上手側を重視した演出がより顕著になっていて酷かった。なぜそれほど上手ばかりに拘るのか。練習室セットが上手にあるせいか、歌もやり取りもすべて上手で、その間下手側がさっぱり使われずガランとしているのも勿体無い。
一番ガッカリきたのが、月森や火原や柚木のソロがすべて上手で行われていたこと。月森は初演では高台の上で歌ったので表情も動きもよく見えて、上からストレートに響く歌声が彼の孤高さを際立たせていたのに。今回の月森は練習室の前で唄うので、その姿も殆ど見えず、歌の深味が殆ど伝わってこなかった。火原のチャームな踊りも練習室の前、柚木も上手ばかりを意識した歌だった。春公演の時以上に、下手を無視したような演出で腹立たしい。
コンクールファイナルはさすがにキャストからも苦情が出たのか、下手の見物人は配さなかったが、メンバーをもっとステージに広げればいいのに、やっぱり上手に集中させて、下手はガランとしたまんま。もう苦笑するしかない。
カニリカ氏はまだまだ脚本や演出では力不足。ライトを利用した左右交互を使う技法さえ持たないようだ。春公演の欠点を補ってくれるかと期待していたが裏切られた。勉強できていなかったようだ。この演出家のもとでは、コルダの舞台の未来はなさそうだ。

キャストも歌は上手くなっているだろうと思っていたが、逆に声がよく出ていなかったり、歌唱力がレベルダウンしていたように見えた。
森咲樹は高音部が割れちゃってハーモニーにまだ不安感。高橋優太はデュエットが増えた分、もっと歌に力を入れてほしい。
金ヤンこと金澤先生役には夏公演から参加の安倍康律。ミュージカル経験は豊かなようで、のびのびした美声を聞かせてくれてホッとした。
王崎と金澤のデュエットや会話が増えていたが、上手通路でやられるとこちらからは殆ど見えず、中味が全く把握できなくてウンザリ。上手通路ばかり使った歌や会話はもうやめて欲しい。

カーテンコールでライトを振るのは変わらず。柚木ではなくパープルお目当てで買って振ってみたが、周りにパープルはおらず浮いた。振りは慣れたのでノリでやってみた。
会場アナウンスは土浦。マルチエンディングは金ヤン。
終演後の日替わり挨拶は王崎。樋賀昇がいつのまにかMCの役どころw。

岡本あずさ版香穂子も観ようとチケットを取っていたが、また下手端の席なのでもう観に行く気力も失せそうだ。当日券のほうがもっと観易い席になるかもしれない。
この劇場でこんなにガラーンと空席が多かったのに呆然とした。中ほどから後方や、私の周りにも人がいなかった。前から4列目中央の席がゴッソリ空いていて、そっちに移動したい気分にもなった。舞台を観ながら、空席が多いのにも納得がいったよ^^;。
美童浪漫大活劇『八犬伝』《第一部》を観てきた。

前方中ほどでとっても観易かったが、劇場の冷房が半端なく凄まじい。途中から冷えてお腹が痛くなってしまった。厚着和装の役者に合わせたんだろうか。

悪の元凶・玉梓の呪いに操られた八房によって身ごもった伏姫の体内から飛び散った八つの珠。その珠を授かった八犬士が己の運命を受け入れ一丸となって、悪の魔人軍団・扇谷らと壮絶な戦いを繰り広げる話。
リーフレットに挟んであった説明書きにあったように、「簡単に言うと、見ず知らずの子どもを呪うという、かなり遠回しな仕返し」には違いないw。
今年初めにAxleの『八犬伝』を観たおかげで、話の流れや主要キャラの把握にはそれ程困らなくて済んだ。色々と見比べもできたし、舞台の物足りなさ感や弱い部分も分ったが、これはまた新しい「八犬伝」として成立しているようだ。
でもAxleでは劇でちゃんと見せていたプロローグを、語りとシルエットと音で済ませるとは、まるでドラマCDのような手抜きぶりw。

とにかくキャストがみんな若い! 10代もいるし経験値が少ない者も多いが、オールメールが其々の役を真剣に楽しそうにこなし、チームワークの良さも感じる。歌やダンスが結構あって、手拍子もわきあがるが、音楽劇だったことをあらためて認識。殺陣も立ち回りもまだまだ不安定だが、みんなの頑張りが伝わって、たまにハっとさせる場面も生み出す。二ヶ月前から猛稽古に励んできたそうだが、その成果は着実に出ているようだ。
ドラマのテーマのひとつが、少年達の成長物語だそうだが、この舞台を通して若い役者も成長していくことが、作り手や受け手にとっても何よりの喜びなのだろう。

前説の二人は当初は誰だか分らなかったが、パンフを観てやっと演出家と演出助手だと気がついた。舞台に出演もしているが、山岡竜弘氏も春謡漁介氏も若くてビックリ。
注目は八犬士だが、最後のひとり新兵衛はオープニングとエンディングのダンスだけの登場。
お目当てのKENNは予想通り、犬塚信乃の役。Axleの柄谷さんと比べてしまうが、二十歳位の若々しく張りのある、人間味豊かで仲間思いの男っぽい信乃になっていた。シリアスとコントのメリハリも絶妙で、シャープな殺陣と身軽な動きが決まり、衣装も似合っていて格好良いことv。
辻本祐樹の犬川荘助もひたむきな熱さがあって、信乃とは抜群のコンビネーションを見せる。
磯貝龍虎の犬飼源八が意外と常識人ぶりを発揮し、八犬士たちの要となる存在感。
北代高士は豪放ぶりとマヌケっぷりの差が愉快だが、猫仕様が可愛らしいというかヘンというか。磯貝さんとの立ち回りは見どころだが、磯貝さんからのハリセンは痛そうだった。
ここまでは一応テニミュ関係になるか。
エア・ギアの新星・小池亮介は背が伸びたのか大きく見えたが、猫かぶりの言動はもはやショタを越えているアヤしさw。
HILUMAの道節が真面目なショタコンぶりを見せるが、男前の美貌と所作にはつい見惚れそう。
天美幸の威風堂々な存在感と殺陣には圧倒されそう。

KENNの唄う「犬塚信乃…♪」のテーマは唐突で呆気にとられたが、悪い奴ら…に笑いが込み上げながら聴いていた。イントロから笑わせた「魔人 GO!」はもっとスゴクて、よく考えたなと感心しながら楽しんだ。
最初と最後の「八犬伝のテーマ♪」は覚えやすくて、ノリノリのダンスと共に手拍子もわきあがる。KENNの「ヒーフー」はおまじないの言葉か!?

Axleと比べるとより荒くて軽いタッチだが、熱いものは溢れている今回の『八犬伝』。
玉梓の件も片付いておらず、八人目もまだだし、今年暮れに予定する第二部を念頭に入れた作り方だった。
第一部よりもパワーアップした舞台づくりを目指していただきたい。


終演後、プチトークショー。この回だけだったようで、知らないで取ってた私はラッキー。どうりで満席だったわけだ。
登壇者は、八犬士+化け猫w。MCは演出家。

KENNと辻本さんはご飯も何度も一緒にする仲良しになったようで、お互いに敬語を使ってたこともあり。磯貝さんのハリセンはテープ補強済みで、ホントに痛いと嘆く北代さん。小池くんのブログにフォローしてと頼む北代さん。HILUMAさんの衣装はホントに厚い生地。岡田光はホントに赤澤燈の色っぽさにメロメロ? 猫から着替えるのに必死の小池くん。
最後にKENNが「ホントに仲が良いカンパニーで充実していて楽しい」「クオリティをエクセレントに!」と楽に向けての意気込みを見せた。

30-DELUX電撃チョモランマ隊MIXの『スペースウォーズ』アンコール公演。丁度観劇する日が、磯貝さんと北代さんのゲスト出演日だと気づいた。
8月末のKENN’n Barは、先週開催店まで足を運んでチケットを入手。投票前日の吉祥寺は自民党総裁が来たので凄い警備と人混みだった。
Studio Lifeの音楽劇『じゃじゃ馬ならし』Hopeチームを観てきた。

二日前の観劇に続く2回目。
スタジオライフにはお初の博品館だが、地下も地上も歩きが多くて着くまでに疲れるわ。
劇場特有の“調教”が我々観客にもなされていることに気がついた^^;。平日限定グッズがあるとはいえ、開場するまでは劇場入口前で待つことさえ禁止、せっかく劇場前まで来ても下の階まで戻ってくれと強制的に立ち退かせる。でも開場5分前なら待機オッケーで、開場6分前はダメというのもいい加減w。休憩時間が10分と短い上にトイレの数が少なく、下の階のトイレに行こうにも、階段は使用不可だしエレベーターがなかなか来ない。結局、休憩時間は長~い列がトイレ前に伸びることは必然となる。劇団側は観客さえも忙しなく動かし疲れさせるという“調教”をしているらしい^^;。

端の席からはよく分らなかったが、今回は中ほどの席だったので、全員の踊りの楽しさは伝わってきた。男たちが髪に花飾りをして女に扮して踊るが、似合ってる人もいたり、イカツすぎてキモい人もいたり。白い衣装は、劇中の衣装とも合わせ易いが、女はこれからどんな色にも染められるという意味も含まれているのだろう。女は男次第ということで、それをオールメールが演じることにも意味がある。
でも本来なら歌と共に手拍子がもっと賑やかに沸くハズなのだが、いまだ少ないのはやはり劇に対する観客の反発が残っているからだろうか。ラストで同じ歌が唄われても、私は手拍子をする気分にはなれなかった。

今回の曽世海司のペトルーチオは、ようやく受け入れられた。垂れ目で少々ヘタレな部分と、愛らしい奇妙奇天烈ぶりと、強引な中に柔軟さが見えて、人間味のあるキャラになっている。独特の「ジョイナス!」が上手く作用w。結婚後の唐突な変貌ぶりにはやや面食らうが、「ファラウェイ!」がクッション材にもなっているw。台詞が明瞭なおかげで、キャタリーナとの丁々発止のやり取りもようやく分って少しは楽しめた。
キャタリーナの青木隆敏も、曽世さんに一歩もひけをとらない奮闘ぶりで可愛らしい。ちょっぴりブリっこな物腰は気になるが、声と台詞をはっきりさせた物言いや動きは頼もしい。ペトルーチオへのケリやビンタは半端ではなく、激しいやり取りは爽快感をもたらす。表向きはペトルーチオに従ってあげてはいるが、実は私のほうが腕力はあるのよ、なんて意味合いも感じさせた。
二人の遠慮のない命がけの関係は、フシギと二人の間に愛情も漂っているのではないかと思わせる。最後に青木くんがキックを浴びせるのも痛快で、曽世さんがニコニコと受け取る様子に、信頼感と微笑ましさが感じられた。
主演二人を替えただけで、キャラクターへの思いがこうも変わるのも妙だ。やはりこの作品は、演じ手を選び、観客とも相性のいい演じ手を必要とするのだろう。

劇中歌にも少し慣れて、「あの男は悪魔だ♪」など面白そうな歌もあったことも分った。だがソロを唄える人が限られているのか、同じような人がいつも唄っていることが、全体から彩とバラエティさを削がしているようだ。
二幕の歌は殆どがキャタリーナの心情を綴ったもので、青木さんに加え林勇輔と石飛幸治がメインで唄うから、場面そのものに飽きがくる。だから眠気を誘うのか。
もうひとりのキーマン・ビアンカやルーセンショーのソロでもあれば、物語と歌に深味が出ただろう。心を通わせたキャタリーナとペトルーチオのデュエットが1曲ぐらいあってもよかった。

キャストのアドリブは絶好調で、カンパニーの仲の良さを感じさせる。
ルーセンショー@岩崎大とトラーニオ@山﨑康一との通路からの会話は殆どアドリブで、主人と召使いの立場が逆転する先輩後輩模様が可笑しい。ルーセンショーとビアンカの二人だけのピンクな世界が愉快だが、大くんが関戸博一にやって見せた「カマキリ」はある意味ヤバいかもw。
未亡人@原田洋二郎は出番は少なめだが、品の良いツンデレぶりが新鮮で印象深い。

キャタリーナに従順貞淑な言葉を言わせた後で、リージーと猫おばさんがまた同じ言葉をリプレイするのは嫌味でしつこい。キャタリーナの言葉だけで、充分その意図は伝わっているから。その後すぐに「女はこわい!♪」の歌を唄われても、感情的に納得し辛いものがこもる。独身女性に「ガンバ!」と言われてもね。従順貞淑なフリをするために頑張れ、ということなのかと勘ぐってしまうw。
キャストの頑張りには拍手したいが、脚本と演出部分では、まだ曖昧さが残り矛盾と波乱に満ちた舞台であった。

25周年記念プレゼントは、Hopeキャストの集合写真。松本くんと芳樹さんもいる。星マークはシツコイ。
次回公演『WHITE』は考え中。秋公演『DRACULA』はまた博品館で調教されるのか!?^^;

パンフの対談でも意識されていたが、蜷川幸雄氏演出の『じゃじゃ馬馴らし』も10月上演。翻訳も同じ松岡和子氏で、蜷川さんの先に上演してよかったwと倉本氏。
蜷川さんの『じゃじゃ馬馴らし』も観劇予定だが、届いたチケットはスタジオライフよりも良席で観やすそう。男性演出家の手でどんな作品に仕上がるだろうか。キャタリーナの市川亀治郎、ペトルーチオの筧利夫は受け入れられるか。大くんがやったルーセンショーは山本裕典だが、ビアンカの月川悠貴は美しすぎてかえってコワイかもしれないw。
Studio Lifeの音楽劇『じゃじゃ馬ならし』Wishチームを観てきた。

スタジオライフ版シェイクスピア・シリーズ第4弾。
翻訳:松岡和子、脚本・演出:倉田淳という女性の作り手による『じゃじゃ馬ならし』だ。

気が強く怒鳴ってばかりの“じゃじゃ馬”キャタリーナを、ペトルーチオという男が従順な妻に調教するストーリー。一方、キャタリーナとは正反対に淑やかな妹ビアンカをめぐる恋の争奪戦も佳境を迎えていたが…。

現代の売れない女優リージーが男に愛想をつかし、猫おばさんの導きで「じゃじゃ馬ならし」の劇中劇に入っていくオリジナル部分を追加。二人は狂言まわしであり、リージーはキャタリーナとシンクロしながら、女としての感情や生き方を見直していくという話。
この現代部分が長かった^^;。いつになったら本編に入るんだろうとヤキモキ。独身女ではなく、夫に不満を持つ妻という設定のほうがより実感がわいたかもしれない。

劇中歌は11曲もあったが、特に心に響いたり感じたり、何度も聞きたいと思う曲が見つからず。
アップテンポもバラードもあったが、曲の調子がどこか古めかしくみんな同じように聞こえてしまう。倉田氏の作詞も良質な言葉が並べられているだけで遊び心が足りない。全員の踊りも頑張ってはいるが、目をひくようなものが少ない。
他の音楽劇と同じように、歌は石飛幸治と林勇輔がリード、確かに上手いが少々飽きがきた。キャタリーナとペトルーチオのソロはあり、其々の感情は伝わってくるが、他のキャラクターソングがないので、彼らの気持ちが把握しにくい。せめてビアンカとルーセンショーのデュエットでもあれば華が広がっただろう。

パンフの女性同士の対談も読んだし、世の中を賢く丸く渡っていくために「人生は演技」という必要性もわかる。だが、この劇からはいまひとつテーマや言いたいことが伝わってこない。
男が女を思い通りに「調教」する話は、やっぱり不快感が伴う。 作り手の気持ちだけが先走っているようにも感じる。
そもそも、キャタリーナとペトルーチオが出会った時から、お互いに好き合っていたように見えなかったところが、解釈できない要因なのだろうか。その前に、ペトルーチオに嫌悪感を抱いてしまうのに問題があったかもしれない。

松本慎也のキャタリーナは、荒々しい言動も可憐に見えて、チャーミングに見えるからいい。歌もちゃんとこなしている。
問題は山本芳樹がペトルーチオに合っていないように思える点か。キャタリーナよりももっと年上でドンと構える野性味と包容力がある男なら、まだ見方も変わっていたが、芳樹さんは残念ながらそうは見えなかった。いつもヘラヘラと薄っぺらい雰囲気で、華奢な体でやたらキンキンと神経質そうに捲し立てるばかり、誠実さや真剣さが感じ取れないのだ。芳樹さんがイケメン過ぎるのがいけないのか、喋り方に嫌味があるのか。ペトルーチオがもっと大らかな猛者風な男だったら、調教されてもいいかも…となるかもしれないw。夏美(@ケロロ)の侵略されてもいいかな…と似たような状況だろう。

関戸博一のビアンカは清楚で可愛い。ルーセンショーの岩崎大と、ホーテンショーの坂本岳大(客演)はバランスよい関係性を見せる。客演の穂積恭平を見るのは初めてだが、劇団にはない柔らかさと愛らしさで、彼がペトルーチオだったら面白かったかも。
それにしても各々の召使いたちが幅をきかせ、主人を差し置いて出番を次々膨らませる話だことw。召使いの中では、冨士亮太@ビオンデロの軽快さが好みだ。

先週初演だったとはいえ、いまだ台詞をつっかえたり滑舌が悪い役者がいたり。そのサマを観客よりも苦い顔で見守るのが、進行役の林さんと石飛さんw。
歌の度にマイクを持つのも手間がかかるが、ペトルーチオの歌の時に箱に隠されてるハズのマイクが無いハプニング。再伴奏での歌になったが、段取りは完璧にして欲しい。あとで「人生はライブだ」とアドリブで笑い飛ばした芳樹さんはさすが。
客席通路を使う演出が多く、舞台への階段が両端にあるので、前方の端の席からでも見易かった。舞台ヘリに座って劇中劇を見るリージーや猫おばさんが、前列の人に愛想を振りまくのも可笑しい。

休憩含めて3時間がかなり長く感じられ、何度か時計を見てしまった。歌を減らせば、もう少し縮められただろうか。二幕途中、バラードや召使いのやり取りで何度かウトウトしてしまった^^;。芝居にもキャラクターにも疲れる作品だった。
二日後は、主演二人が変更するHopeチームを観劇予定。ペトルーチオをもう少し受け入れられるように望みたい。


終演後はトークショー。MCは藤原啓児と曽世海司。
昨日は女性キャストだったそうだが、本日は野郎の面々で、山崎康一、山本芳樹、河内喜一朗、倉本徹、岩崎大、坂本岳大の6人が登場。テーマは女性のことを喋りたおすw。

質問1は、劇中に出る3人の女性でどの奥さんが好みか? 倉本さんは、世の中は未亡人。坂本さんは結婚前と結婚後で違うw。
質問2は、女性をコワイと思う瞬間? 山崎さんは食事の時に何も言わないので「どうなの!?」と訊かれる。芳樹さんは全部を見抜かれてるような気がする。大くんは「うんいいわよ」と言ってて「よくないじゃん」w。
質問3は、生活で人生は演技だと思うこと? 坂本さんはウチではずっと演技w。河内さんはウチはコワイですよと、脚本を書いてる時は不気味な雰囲気だと、ヤバイことを口走り^^;(苦笑)。慌ててトークをおさめる藤原さんと曽世さんだが、何故こんな話題を河内さんにフってしまったのかと、ヘンな汗をかいた二人だった(笑)。

最後に作品について、女性にとっては不愉快な部分を持ってるし、男性社会で男尊女卑と思われるかもしれないが、皆さんに見てほしいと宣伝する藤原さん。
そうはいわれても、今作は長いし面白味も感動もわかないしで、私の追加の観劇はないだろう。
劇団21世紀FOX第65回公演『南の島に星がふる』を観てきた。
今回も平日マチネ割引でありがたい。今回の自由席も前から2番目へ。

【エナケン・シリーズ】第三弾の再演。『スチャラカパイのギッチョンチョン』『独立サッカリン部隊』の続編だ。
戦地で合流し港へ向かう劇団座長・南武賢太郎こと”エナケン”と劇団一座だが、荒波にのまれて南の島に漂着する。島には残留部隊もいたが、アヤしげな魔のキノコに侵される軍医によって、エナケンたちはまたもや危機に襲われる。
作・北村想、演出:肝付兼太、音楽:ノノヤママナコのスタッフ陣と主なキャストは変わらず。ナレーションでも参加される肝付さんのにこやかなお姿を、上演前後にロビーで拝顔した。

前回は軍隊という強制的統治下でなかなか自由な言動が許されなかったエナケン。だが今回は理解のある上司の白瀬中尉と最大の味方の劇団員を配し、前向きで自由気ままに生きるエナケンの持ち味がいかんなく発揮され、スカっとした爽快感がある。エナケンがあるところ、例え食物がなく帰れるアテがなくとも、何とかなるさという気になるから一座の連中も明るい。
だがこの孤島にもエナケンを敵視する者がいた。何と前回の宿敵・楠本と瓜二つの五月軍医。似ていても根は悪ではなく、何故彼がこんなにグレてしまったのか、何故彼が魔のキノコに走ったのかが、この作品のキモとなる。

今回もオリジナルの歌がたっぷり、男気ある踊りや可愛い踊りもあり、劇中劇もありと盛りだくさん。誰もが知ってる今風のギャグも散りばめたテンポよい運びで、笑いあり涙あり、殺陣やアクションあり、ロマンスまでありで、まさに【エナケンオペレッタ】の極み。
総勢40人近くのキャストが、堅実な芝居でエナケン・ワールドを凛々しく豊かに作り上げる。コーラス隊のあでやかさも華を添える。

前半のフンドシと、後半のキッスにはヤられた(笑)。どれも刺激的でニンマリしそう。
飄々と気取らない優しさとシブトイ強さを見せるエナケン@山口勝平の熱演が光る。男前で大らかなフェミニストの白瀬@宮下タケルは、何を着ても何も着なくてもカッコイーv。男の弱さと悪賢さを覗かせる五月@河本浩之が、立ち回りと静かな芝居で存在感を出す。
房枝@井路端治子の清楚な美しさと凛とした芝居が心地良く見惚れそう。爛々(星)@長嶋美歩が可憐な芝居でキーマンの役割を果たす。
お馴染みの一座のメンバーも逞しく、隊長はじめ部隊の個性的な兵隊たちも愛らしく思える。
『ギッチョンチョン』のテーマ曲も唄われたが、オリジナル曲も多く、販売CDには13曲が入っているようだ。

エナケンは、生きることに目的なんか持っていない。何故芝居をするかと問われても、食うことと、あとはその場その場の状況によるとエナケンは答えた。
こんな世知辛いご時勢、運が良けりゃあ何とか生きられる。今日一日生きることが出来ただけで感謝だ。「生きる」ために生きることを、エナケンは体現しているのだろう。
生きることを狂わされそうなエナケンを救ったのは「愛」。南の島にふったのは、生きることから解放された「死」。今作は“愛と死をみつめて”の一編だった。

最後はメイン三人が残ってのお辞儀だが、宮下さんと河本さんの間をすり抜かれた勝平さんがひょうきんでキュートだった。
来年正月を以ってシリーズ完結というタイトルは『赤いリンゴに唇よせて』。サトウハチローさんの詩は「だまって見ている青い空~♪」と続く。赤と青の世界というとBASARA!?
シス・カンパニー公演『At Home At The Zoo(アット・ホーム・アット・ザ・ズー)』を観てきた。

アメリカの劇作家エドワード・オルビーのデビュー作『動物園物語』。半世紀を経て自らの手で新たに“前編”にあたる『ホームライフ』を執筆。2幕物芝居『At Home At The Zoo』へと改題され、今回が日本初演となる。

第1幕『ホームライフ』
中年男性ピーターが、家で妻アンと会話する。
第2幕『動物園物語』
中年男性ピーターが、外で見知らぬ男ジェリーに絡まれる。

どちらも登場するのは、教科書の出版社に勤務し安定した生活を送るピーター。
妻との会話では、こういう話を夫婦でしたことがあるような、ナマナマしい話題が噴出して、第2幕へと続く。
男との絡みでは、しつこいやり取りにうんざりしながらも、男と男とのアヤシイもつれ合いが意外な展開へ。
一幕で自分と身内の者とのズレや歪みにようやく気づき、二幕で自分のこれまでの生き方に疑問をもつピーター。

中年男の安定に見えた危うい生活、内で見せる顔と外で見せる顔の違い、温和の中に潜む暴力性と狂気。様々な二面性が内包されているようで、浅くて深くて、衝撃的で怖い話であった。
二幕は“動物園物語”といいながら、「動物園に行ってきた」という台詞があるだけで、“動物園”そのものは出てこない。だがジェリーの言い方を借りるなら、登場人物三人ともが、ホームという柵や公園という柵で暮らしている“動物”なのだろう。舞台という“動物園”を、我々観客は高い席から見下ろしたり、サイドシートから見入ったりしているのかもしれない。

リビングのソファが沈み、公園のベンチが浮かぶ、美術装置も巧みな二面仕立てで驚かされる。月が瞬く間にマンホールの蓋に変わるが、天空と地下に隔たりがないように、“人”や“動物”にも上も下もないのだという、社会的な不条理さえ感じさせた。

テンポよい掛け合いが繰り広げられるが、膨大な台詞量と捲し立てる長台詞には圧倒されそう。
堤真一、小泉今日子、大森南朋のナチュラルな演技が光り、よく奮闘されている。堤さんと小泉さんの共演は『労働者M』以来だろうか。
堤さんはクリーム色のシャツと薄茶のズボンで、飾り気のない普通の常識人を装う。眼鏡のままでもよかったが、老眼鏡の設定だろうか。一幕では笑ったりとぼけたり真面目だったり、二幕ではうなだれたり泣いたり叫んだり大笑いしたりwと、堤さんの喜怒哀楽が詰まっていて観てるだけでも飽きない。
小泉さんは薄化粧で、オレンジのインナーを透かせた白いシャツが爽やか。部屋履きが歩き易そうだが、足の赤いマニキュアがお洒落。縛ってた髪をやがて振りほどき、徐々に淫乱な顔を見せるところがそそられる。
大森さんはボロいシャツとボトムで、見るからにフリーターかホームレス風。丁寧だったり怒鳴ったり脅したり自虐的だったりと複雑怪奇な人物を見事に表現。繊細な表情や言葉の端々から“堤さん”ラブな雰囲気が感じられたりw。

小泉さんは甘えたように話す時、決まってソファに足を曲げて色っぽいが、大森さんもたまにベンチで足を曲げて相手に近付くので、演出的に同じものを求めたのだろうか。
一幕は家の中の会話とはいえ、小泉さんの声が小さくて、釣られて堤さんも小声になるので、たまによく聞き取れないことがある。特にラストのやり取りの時に、私の隣の女性が何度も咳をされたので、丸ごと二人の台詞が聞き取れなかった^^;。せっかく面白そうな会話なのに、咳だけで影響されるのも残念。もう少しマイク音声を調整したり、大きめの声で発することを意識して欲しい。
二幕は大森さんの明瞭な台詞もあって、二人の会話はしっかり聞き取れた。でも会話の内容は実はあまり面白くない^^;。

だいぶ前に発表されたが、堤真一×草なぎ剛の『K2』が10月に隣のパブリックシアターで上演。
4年前にシアタートラムで草なぎさんの『父帰る/屋上の狂人』が上演されたが、そのパンフで堤さんと草なぎさんの対談があって、いつかぜひ共演したいと話されていた。それがようやく叶うわけだが、はたしてチケットが取れるかどうか^^;。
シアターコクーン・オンレパートリー2010『ファウストの悲劇』を観てきた。
初日から二日目なので簡単に。

学問や知識欲に満たされず魔術にふけるファウスト博士は、悪魔メフィストフェレスと契約し、己の魂を悪魔に渡すかわりに、やりたい放題をする絶大な力を手に入れる。ヨーロッパ中を見物し、ローマ教皇をおちょくり、美女ヘレナまで手に入れたが、契約の時が迫るとファウストは後悔し始める…。

『ファウスト』の舞台は、演劇集団円で観たことがあるが、今回のは英国の劇作家クリストファー・マーロウの16世紀の戯曲。
蜷川幸雄×野村萬斎の第三弾。『わが魂は輝く水なり』以来に観るが、蜷川氏の手による萬斎さんは実に美しく魅力的だ。
メフィストフェレスには勝村政信。蜷川氏とは初顔合わせで演出家でもある白井晃、長塚圭史が脇を固め、独特な語り口で木場勝己が口上役をつとめる。

ストーリーや理屈そのものより、びっくり箱をひっくり返したような、刺激的でサプライズな劇場空間に翻弄された。
歌舞伎小屋の垂れ幕に楽屋、拍子木に着物に歌舞伎の見えが出てくるかと思えば、天使と悪魔に魔法陣にヨーロッパの地名や英雄が名を連ねたりと、和モノと洋モノが混沌とする空間が広がるのに面食らう。それらが妙にマッチングするのもフシギだ。
舞台の三方鏡張りは珍しくないが、照明で透けると楽屋裏が見える仕組み。注目どころは前列座席をつぶして、舞台下からの通り抜けにしたこと。舞台下には何と地獄が作られているのだ! これも照明によって見えたり隠されたりするが、地獄から悪魔や魔物が地上にやってくるサマをしっかり見せつけるところが可笑しい。
悪魔の造形は『デスノート』のリューク並みだが、これがわんさか出てきて、空中を舞い上がり飛びまわる様子が面白い。フライングの大盤振る舞いに加え、スモッグに花火に奈落落ちまであり、効果音も相まって大スペクタルな舞台が繰り広げられる。
客席通路を使う演出も半端なく、人物がいったいどこから出てくるか分らない楽しさもある。とりわけファウストに命じられるまま動かされたメフィストフェレスが、一番疲れたかもしれないw。
当初から前方通路側に3席ほど空いていて勿体ないなと思っていたら、実はそこはファウスト様専用席だったw。ファウストまでもが客となって、ステージの歓楽を楽しむといった趣向。
今までの常識を覆すような、奇抜で混沌とした演劇世界が目の前に広がっていたのだ。

「あくまで錬金術師ですから」の言葉が浮かぶほど、様々なアニメが脳裏に浮かんでもくる。
ファウストの野村萬斎は老いた身から若返るときは、何故か燕尾なタキシードで、黒執事をイメージさせるような上品で男前な格好v。髪の色はエドだけどw。
メフィストフェレスの勝村政信は、悪魔の格好から着替えるシーンもサービス、何故か白のタキシードで登場し、誰よりも人間臭く見えるのが一興。
この二人の仰々しい契約シーンも凝っているが、見どころは二人で踊るタンゴ。ファウスト、受けやねん(*^。^*)。萬斎さんの腰つき、とろけるような目元が何てセクシー。萬斎さんそのものが“エロス”だw。
ファウストの脳裏に、天使が忠言し悪魔が誘惑をかける様子も、エロアニメでよく見る光景w。良い種と悪い種がいて、悪い種を選んだんだね。

出演者は男性陣ばかりで、女性は老け役の市川夏江と三役をこなす大林素子のみ。大林さんは背の高さでふしだらや王妃や夫人を演じたが、あまり色気が感じられない。色ものは萬斎さんが引き受けた感じなのか。
長身の美女ヘレナとして偽オッパイを注目させた鈴木彰紀も、色っぽかった。マメ山田らの小人役者も様々な役で活躍。
天使と悪魔が混在するだけでなく、大きな人と小さな人を隅々まで生かした舞台でもあった。

欲望や快楽を求めたファウストだが、透明人間になったり、気にくわない人を動物化したり、英雄をよんだり、美女を手に入れたりと、やってることはドラえもん&のび太の枠内で、どれもこれも子どもっぽいこと。
尊敬は得られたが、愛情は手に入れられなかったファウストの切なさ。最後はファウストに後悔の嵐が吹き荒れ、彼の意外な弱さや小ものぶりを見せ付けられて少々ガックリくる。独白シーンも長い。
約3時間だが、ハチャメチャ感に酔う一幕の面白さに比べ、二幕後半は少々ダレて長く感じた。
めくるめく悪魔の世界に身を浸し、饗宴をひと時楽しむだけでもお腹いっぱいになる娯楽作であった。

コクーンで次回観る作品は『広島に原爆を落とす日』。初日の8/6に観劇予定。主役の筧さん、台詞の量がもの凄いらしい。
ミュージカル『忍たま乱太郎』再演の弐回目を観てきた。

9/2発売のDSパズルゲームのポスターがデカデカと。こんどの忍たまは“しゃべる”が、綾部もさりげに映ってるではないかw。
公式サイトの声優さん応援コメントには、初日に観劇にいらした田中真弓(きり丸)、置鮎龍太郎(伊作)に神奈延年(小平太)。鈴木千尋(留三郎)に成田剣(文次郎)に保志総一朗(仙蔵)に渋谷茂(長次)らのコメントもいつかくるといいな。

金曜終演後に急遽取ったチケットだが、前通路でゆったりと観易くてラッキーすぎる。関係者列なのか、隣の隣には観劇中しきりにメモを取る男性の姿が。

金曜の舞台よりも、隅々まで完璧に仕上がっていた。
金曜に失敗していた棒やら網やらの道具使いも上手く決まったし、目立った音響の不具合もなく、スタッフワークはまずまずの出来。
折り返し地点で、一部キャストの動きに若干疲れが見られたが、生き生きとキャラクターを作り上げて見事なコンビネーションを発揮。
キャスト・スタッフの心意気と共に、観客までもが終始あたたかい眼差しで見守り、手拍子に拍手と率先して舞台を盛り上げ、まさに一丸となったリアルな面白さを放っていた。

六年生が出てくるまでが少々長いが、ストーリーよりも、生き生きと立つキャラクターが嬉しい。
六年い組、ろ組、は組と2人ずつに分かれるが、絡む相手やコンビが何度もかわり、6人の様々なコンビプレーや会話が楽しめる。
似た者同士でライバル同士の留三郎と文次郎が、反発しながらも互いに認め合い向き合っていく様子が見どころだが、今回は二人によるデュエットも綺麗にハモっていた。長次と小平太の無言の親指アイコンタクトがお気に入り。強敵・赤壁に向かって次々雪崩れこむ六年生のシーンも好きだが、伊作と仙蔵が同時に剣を叩き込むところが息ぴったり腰が入っていてカッコイー。おにぎりと結束が消えて残った伊作と仙蔵と長次の様子もイイ。
前回からのキャストは自分のキャラクターをより深く作り上げたいと思ったようだが、確かに文次郎も仙蔵も長次も小平太も表情や感情にメリハリがついて、人間味豊かなキャラに仕上がっていたと思う。

六年生全員を相手にする赤壁さんも大変だが、翁長卓の殺陣やアクションは本格的ですごい。
それを言うなら派遣ドクタケ忍者隊の技術や芝居も素晴らしいこと。派遣忍者ときいて、派遣イマジンが浮かんだのは私だけか。正規より派遣のほうが仕事に使えるのもお約束かw。
前説の土井先生も絶好調だが、郷ひろみは森本亮治の杵柄だったんだろうかw。「半子さん」「伝子さん」がカワイイが、山田先生と土井先生の小芝居も愉快。山田先生@今井靖彦は『ゲキレンジャー』の黒獅子リオ様のスーツアクターだったのか。
小さなお子様もチラホラ見かけたが、六年生というより、乱きりしんや八方斎の場面で笑い声が聞こえた。

客席降りではドクタケ忍者の太った方が観客と握手をしていたw。
「勇気100%」では六年生が客席降りで会場を沸かすが、こちらには留三郎が来てニコニコと周りを見渡していた。
穴太@さけもとあきらが登場するだけで拍手がおこり、「勇気100%」のソロも見事に花開く。

一年生トリオは、19時開演のカテコでは時間制限で引っ込んだが、今回昼はちゃんと出席。
日替わり挨拶は立花仙蔵役の三津谷亮。最初のうちは「新キャストと共に」としっかりと話し、近江陽一郎と陣内将がお辞儀をするシーンもw。ところがキャラ作りで「クールだけでなく…」のあたりから話がどんどんグダグダになり、同じこと言っちゃったと自分ツッコミw。このグダグダ感は仙蔵繋がりでまさに保志くんだ!と苦笑したが、思わぬハプニングが^^;。青森から夜行バスで家族が観に来たという話をしながら涙目になる三津谷くん。きっと客席にいる両親の顔を見ちゃったんだろうね。「僕の稼ぎが少なくて…」と家族思いの言葉を口にしたり、「再演の時は泣かないと決めたのに…」と言いつつ涙が止まらない。慌ててティッシュ箱を貰いに行った陣内くんがティッシュを渡したり、山口くんが三津谷くんの肩を抱いたり、上鶴くんと桑野くんがフォローに回ったりとステージはてんてこ舞いw。ところが今度は近江くんまで貰い泣き!? ティッシュが次々無くなり、箱の中がカラッポにw。その間、他のキャストは黙って後ろで見守るほかなかった^^;。
やっと立ち直った三津谷くんは、目立った事故もなく皆さんの声援のおかげだと感謝を表して、最後に観客と一緒にコール&レスポンス。「俸禄ひやの」コールに「予備ならあるぞ」と応え、「サラサラ」コールにクールに髪を流して見せた。
みんな手を振って終了。後説は、くの一トリオと新吉さん。良い舞台を見せて頂いた。ありがとう。

これだから若い子はカワイクって仕方がないw。これから仕事がどんどん増えるといいね。
D2の山口くんと上鶴くんは夏に『ラストゲーム』。山口くんは六年生から今度は一気に大学三年生となり(笑)あの龍輝くんの上をいく飛び級ぶり。
ミュージカル『忍たま乱太郎』再演を観てきた。

今年初めにGロッソで人気を博した『忍ミュ』が、キャストを一部変更してのめでたい再演。
ロビーには、キャストからの“大入”メッセージボード。
物販には写真やらトートバッグやらあって、思わず買いたくなりそう。

前説は、初演と同じく土井半助&くの一トリオ。土井先生、歌が増えてるようなw。
本編ストーリーは初演と変わらず。忍術学園一年生の乱太郎たちがドクタケ忍者にさらわれて、学園長から救出の命を受けた卒業準備中の六年生6人が、妨害する忍者たちとのたたかいに挑んでいく。がんばれ六年生!

初演よりも少々長く感じられたが、中味はテンポ良く濃密で、舞台としての魅せどころも見どころもたっぷりで楽しかった。
六年生の歌やダンスが息が合っていて、みんなとっても格好良い。土井先生は歌も出番も増えていて嬉しい。
殺陣やアクションは、初演よりもパワーアップしていて、本格的な見応え感もある。六年生の頑張りにも拍手。ドクタケ忍者アンサンブルの功績も多く、小芝居に笑いアクションに見惚れたり。キャスト変更が功を奏したのか、赤壁と新吉とのエピソードも分りやすかった。
何より、初演と比べて観客の受け入れ感が違う。歌の度に手拍子したり拍手したりとノリノリで、静かに聴きたい時はちょっぴり面倒^^;。
ラストの「勇気100%」では、客席通路にキャストが来て沸かせるが、フリまで付いていたとはビックリw。既にフリを踊る観客もいるし。
舞台と客席がいっそう一体感に包まれ、会場をギンギンにいけどんに熱くさせて、大らかで爽やかな感動を生んでいた。

六年生キャストは食満留三郎と善法寺伊作が変更。
留三郎@近江陽一郎は初舞台に初主演の大役だが、周りに支えられながら、誠実でまっすぐな演技で頑張っていた。負けん気が強い素直じゃない言動を、嫌味なく演じて合っている。文次郎との背のバランスもよく、文次郎にやや遠慮がちな感じがイイ。
伊作@陣内将は春の『NOW LOADING』以来だが、やっぱり達者な演技で目立つこと。飄々と明るい中にも怪しくて、周りと溶け込みながら、自分だけの伊作を作りあげている。歌も自然にこなし、こんなに唄えるとは驚いた。
潮江文次郎@山口賢貴は初演よりも男らしく、立花仙蔵@三津谷亮は初演よりもきめ細かい演技。中在家長次@上鶴徹は、初演よりも存在感が際立ち上手くなっている。七松小平太@桑野晃輔は『“P”s』の髭面と全く違い、生き生きと活発なアクションで、いけいけどんどんとキャラが立っていて面白い。
D2の5人+ひまわり1人となったが、彼らの結束力が素晴らしい。

穴太@さけもとあきらは相変わらず東宝ミュージカルな美声を聞かせる。山田伝蔵@今井靖彦は殺陣アクション指導もされたが、さすが目が覚めるような立ち回り。土井半助@森本亮治は歌も台詞もいっそうノリノリで、可愛さと格好良さで沸かせる。伝蔵と半助の女装場面もパワーアップw。
乱太郎、きり丸、しんべヱの子役たちのチームワークも可愛らしく、しんべヱの歌声は特に伸びと透明感がある。
翁長卓@赤壁は、渇きと野性味のある危うい存在感で、見事な立ち回りを見せる。

六年生とくの一でちょっぴり台詞がカブったり、穴太の歌でマイク不具合があったりしたが、目立つハプニングはなくてホッとした。
終演後の三方挨拶の前に、段取りを間違え喋り出した近江くんを賢貴くんがフォローしたりと、ほのぼのしたやり取りもイイ。真っ赤になって頭を下げる近江くんが初々しいこと。
役者挨拶当番は賢貴くんだが、上鶴くんが長次とはうってかわってツッコんで、会場を沸かす。上鶴くんも桑野くんも関西出身だしね。

パンフに歌詞が載っていたが、六年生が唄う「卒業」歌詞で6人の星座血液型とクラスをやっと把握できたw。
アンケートに「どの学年のお話が見たいですか?」とあり、主催側は今後もやる気満々らしいw。ちなみに綾部が出る四年生が見たいかな。

初演よりとにかく格好良くパワーアップしていて、一回の観劇では我慢できなくなり。
グッズなどを買うよりはと、終演後に窓口で日曜のチケットを買い足してしまったw。関係者列の席を空けてくれたんだろうか。私が観劇回を増やすぐらいだから、初演の時よりも更にリピーターが増えそうだ。
劇団昴公演『スタア』を観てきた。

主演の宮本充と松谷彼哉へ、ぴえろから花壇が。中尾さん@マユリ様から乱菊さんにも花壇があって、先ほど観た『宇宙ショー』には宮本さんも出ていたし、ついアニメのことが脳裏をかけめぐる。

人気俳優と人気歌手夫妻の新居お披露目パーティーの日。マネージャーに作曲家や芸能記者が招待される中、夫妻と因縁の男女まで入り乱れ、様々な欲望と事件を引き起こす。ところが地震をきっかけに、マンション中が時空の荒波に飲み込まれていく。

筒井康隆の1973年の脚本に興味をひかれての観劇だが、さすが奇才・筒井さん。芸能界の欲望うごめく壮絶な人間模様を、ブラック・ユーモアにすっぽりと包んで弾け飛ばしたあたり、刺激と毒のある舞台で独特の面白さがあった。
設定も1973年とあるが、携帯もパソコンもないクラシカルな時代が懐かしくも滑稽で、いっそう風刺を伴って人間の危うさを感じさせる。のびのびとした表現や言葉が許された時代であったが、今ではキワどくタブーとされることも扱われており怖さもひと際だ。
芸能人と学者という、明暗のキャラクターを対峙させ、どちらがマトモでマトモじゃないかの問いかけを更に越えるところがスゴイ。日本だけでなくワールドワイドに風呂敷を広げた後で、真の「スタア」とは見られてなんぼの価値なのだと、実際に見せてくれる大サービス。
先ほど観たアニメ映画のタイトルとカブって、これもひとつの“ショー”ビズ、これもたくさんのスタアが散りばめられた「宇宙ショー」なのかもしれないと思ったw。なるほど筒井作品は、一歩も二歩も、三十七歩も先をいってたわけだ。

宮本充は端整な顔立ちを何度も崩しながらの熱演で、やや芝居がかった演技がいっそう可笑しさを引き出す。
松谷彼哉は可憐な声も心地良く、華奢なスタイルも抜群、嫌味がないところが可愛く、歌声よりもフリや動作やドレスに意識が向く。
女中役の舞山裕子のホットパンツから伸びた脚に気を取られたりw。マネージャー役の岩田翼はなかなかの色男風。
かつて筒井さんも演じられたという犬神博士を田中正彦。博士の登場は場を混乱させるが、ある意味快感でもある。

美術やセットは昔ながらのものではあるが、なかなか凝っていて面白い。ソファはよくある定番だが、キャビネットやピアノなどビックリ箱のような仕掛けで、煙に巻きながら舞台を活気づかせる。壁が取り去られる場面も別世界のような趣で巧妙だ。
上演中どこからか入りこんだ1~2匹のハエがずっとステージを旋回し、たまに客にもちょっかいを出すので、そっちにも気を取られた。時空のゆがみがキモの作品だが、あのハエも数万光年の彼方からやってきたのかもしれない。
それにしても総勢24人という錚々たる人数のキャスト。パワフルで逞しい「すばる」というスタアをあらためて認識させられた。


上演後、舞台説明会。
ターザンと白くまくんが進行し、美術を担当した皿田圭作氏がトークと説明。
半年前から作業をされてたそうだが、ほぼ初演の時の装置が継がれたらしい。
実際に昴の若手にやらせながら、ソファやピアノやキャビネットの仕掛けを細かく見せてくれた。大きさや奥行きなど広めにとってあるようだ。音響や照明とのタイミングも功を奏す。ターザンロープは9メートル。
壁のパネルもはがして見せて、少しずつアレが我々の前に再び姿を現す。素晴らしいセットであった。
舞台『天聖八剣伝』を観てきた。

花壇が賑やかで、「シンケンジャーVS超電王」みたいなヤツもありw。
ロビーではキャラクターに合わせたカクテルも販売中。
通路側の席で思ったよりも観易い。

天より与えられし聖なる剣を持つ者「天聖」伝説から、数百年後の明治初期。義賊を名乗る青年が「天聖」としての己の運命を知り、同じ「天聖」仲間の裏切りや戦いを経験しながら、自分の運命に立ち向かっていく話。
作・演出は、きだつよし。二転三転するベタなストーリーだが、アクション冒険活劇の王道を気持ち良く貫いている。テンポの良い運びで、殺陣やアクションも満載、キャストとキャラが融合して、熱気に溢れた爽快感ある面白い舞台だった。

オープニングの布は、吉谷光太郎氏の演出に似ていてダイナミック。Axleの『八犬伝』もこの劇場でやってたら、もっと壮大な舞台になっていただろうか。
二枚板移動による場面展開もスムーズで、中から現れる人物サプライズも妙。身体から“剣”が出てくる設定は某アニメが思い出されるが、ステージ上で床や壁を使った剣の出し方が上手かった。
幕末から明治へと移りゆく時代背景を巧妙に取りいれており、力をもった軍隊や警察がのし上がり、貧しき者弱き心の者が虐げられる世の中を風刺。
鬱屈した世の中を粋がって得意気に生きてきた若者が、どん底に落ちてやっと真実を見据えた時、自分の信じた自分らしい生き方を貫いていく。勇気と信頼を描いた男の成長物語でもあり、テーマが明確にされているのが心地良い。

個性的なキャストによって、とにかくキャラクターがみんな立っている。
相葉弘樹と馬場良馬は、不二兄と手塚弟であるがwシンケンネタがあったり。二人とも前半はやけに声が高くて可愛かったが、これが変身への役作りでもあったわけだ。
相葉さん@絢人はのびのびした中に繊細さがあって、気骨ある芝居で座長の役目を果たした。後半の衣装がルーク・スカイウォーカーに見えてならないw。
馬場さん@見影は見るからに東山兄弟さんがやっていた役に似ていて、こりゃ化けるだろうなと思っていたがその通りw。軽妙な動きで舞台を活気づかせた。
大河元気と森久保祥太郎は、ダブル赤也じゃないか(『テニプリ』舞台版とアニメ版)と密かにワクワクw。二人とも声がよく通って芝居も達者だこと。大河さん@間はオールバックで大人びてるけど可愛くて芯が通っている。祥ちゃん@兼光は胡散臭い“オカマ”だけど、滑らかな台詞使いと声使いはさすがミラクルボイス。二人とも映像よりも舞台のほうが合ってるように思う。

若手に混じって、西ノ園達大、ダイアモンド☆ユカイ、黒須洋壬が重厚かつ柔軟に物語を練り上げていく。西ノ園さんは爽やかで誠実そうに見え、白衣もスーツもよく似合ってステキ。黒須さんは渋くてダンディで品があり頼れるおじ様。お二人の声がホントに素晴らしく、舞台を理解し易くして引き締める。ユカイさんはこの劇場では『鉄人28号』以来だが、ムードメーカーな存在感で舞台を和ませる。「動向」と「風にあたる」に笑った。
メンバー最年少で初舞台の戸谷公人は、発声や滑舌など台詞はまだまだ不安要素、周りからもだいぶ助けられていると思う。でも柔軟性と吸収力があるようで、舞台上でどんどん芝居が光り、この先の場数次第で大きく成長しそうだ。

エンディングが余韻を伴って格好良く、続編や外伝も期待させられる後味の良さ。
もう少し近場で日にちに余裕があったら、もう1回観劇したかった。


公演終了後、アフタートークショー。これが最後のトークショー。毎回MCは西ノ園達大、今日は相葉弘樹×大河元気。
西ノ園さん、手に汗握るあまり今日の台詞をトチったことをお詫びw。

オールバックの元気くん、役作りもスンナリだとクールに言うと、牽制しつつ相葉さんが「かわいいかわいい」。元気くんの役は年少キャラなので、役的に「ムチャぶりの嵐」だという。
二人の共演は「前はラケット握るヤツ」w。しかも対戦相手だったが、今はネット越しではなく、至近距離で戦ってるという。
5人からの質問に答える。馬場さん→相葉さんへの質問は、キャラを動物に例えると?
ちなみに馬場さんから見た相葉さんは、キラキラしたカワイイキツネw。サル、コアラ、ワンちゃん、シカ、ネコと出たが、馬場さんは馬まんまだし、大河さんはマメって動物じゃないw。
ユカイさん→元気くんへの質問は、ガンダムに乗れれば何やりたい?とか、どのアニメのキャラクターをやりたい?とかオタク質問ばかりw。無重力楽しむとか、バルキリー乗りたいとか答える元気くん。アニメキャラは舞台でやらせて貰ってるので特になさそう(今度の『花咲ける青少年』でもルマティをやるものねw)。
最後にひと言ずつ述べてから終了。15分程だが、テニミュも思い出されて面白かった。

相葉さんへ鈴木勝吾くんからの花壇があったが、そのうち同じ劇場で勝吾くんも舞台に立つから、今度は相葉さんからお花が届くかしらん。『源氏物語…』は役者先行で早々とチケットが取れてしまった。10月末の舞台だぜ^^;。
野田地図(NODA・MAP)第15回公演『ザ・キャラクター』を観てきた。

野田秀樹が東京芸術劇場の芸術監督に就任してからはや1年。
シアターコクーンのイメージが強かったNODA・MAPだが、いよいよ芸劇に初進出する。

とある書道教室に、「幻の弟」を追いかける女が現れる。書道教室の家元を信じて、様々な老若男女が登場して口々に賞賛するが、やがて彼らはギリシア神話の神々の名前を与えられていく…。
どんな“キャラクター”が出てくるのだろう、という淡い期待は早々と打ち砕かれた。むしろタイトルそのものを、“変容”とか“チェンジ”(もう一つの意味も含めて)とかに変えたほうがすっきりおさまりそう。

ステージ冒頭に二つの漢字が掲げてあったが、前半は家元による、この“漢字”遊びや“言葉”遊びがなかなか興味深くて面白い。「神」やら「信」やらの漢字に納得し、「ギリ写経」に苦笑し、「半紙」に頭をひねった。
斬新な映像表現にも目を瞠る。見上げる無数の頭たちと人物の合成は見事で、四方八方の紙に映しだされたテレビ映像も面白い。アナウンサーの声が幾重にもコダマしたり、テレビカメラのライトが幾つも登場したりと、音響や照明への気合が感じ取れる。

私自身が書道教室にお世話になったので、思い入れがある書道という行為が、徐々にエスカレートする光景には絶句した。無数の半紙に筆で字を書いてる分にはまだおとなしい。ステージ床そのものが白い紙となっており、縦横無尽に床に何かを書き続ける者たちはまるで狂人の如く。墨が舞い散り、血のように床に降り注ぎ、はては顔中を墨で塗りたくり、墨を飲ませ口の中を真っ黒にさせる夥しい様子は、グロくてとても見ていられない^^;。

オウムをモチーフにした話だというのは徐々に分る。
それが善なのか悪なのか、どう捉えてどう裁かれなければいけないのかには触れていない。家元による言葉のマジックやトリックや巧妙な弁舌によって、フツウの人たちがどのように騙され丸め込まれのめり込んで堕ちていったかを、見せた話でしかない。そこには、犠牲になった人々の痛みと嘆きが残されたままで、不快感だけが漂うだけだ。
舞台は常に暗く鬱々とした雰囲気が続き、だんだんと疲れて気分が悪くなり眠くなってきた。観劇中にキャンディを舐めたのも久しぶりだ。後味も苦くて、リピートしたい気持ちもわいてこない。
重苦しく難解なテーマを扱い、本気を伴った渾身の作品だと思うが、芝居としてもう少し分り易く楽しませていただきたい。観るほうにも、考えさせる余地と救いを与えてほしかった。
傘が出てきた時はゾクリとしたが、雨降りの時期と重なり、長傘を見る度に怯えそうだ^^;。

宮沢りえの長く黒い髪が、漫画のヒロインみたいw。やや低い声から発せられる台詞の数々が重みを感じさせ、のびのびとした動きが眩しく映る。名前がどんどん変えられたが、本当の名前は最後に出てきたようだ。
家元役の古田新太の胡散臭い存在感には圧倒されるが、家元夫人の野田秀樹の女装が可笑しくて一番怖ろしくも見えたw。
ユーモアを伴った橋爪功、ユニークで小回りがきく藤井隆、生真面目調な田中哲司ら三人の意気投合ぶりに注目。
池内博之とチョウソンハは男前なだけに、もっと出番があってもよさそう。美波が難しい役どころ。
開場後のビラで知ったが、銀粉蝶が稽古中の怪我で休演し、代役で高橋惠子が出演。細くて綺麗で生々しさがなかったかな。

< 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 >

 

お気に入り日記の更新

最新のコメント

この日記について

日記内を検索