朗読劇『緋色の研究』を観てきた。

天才的な観察眼と推理力を持つ探偵シャーロック・ホームズと相棒ジョンH・ワトソンが送るミステリー朗読劇。
毎日、日替わりのキャストが演じるが、男二人だけの劇となると、同じ劇場なだけに夏の『スリル・ミー』を思い出す。だがこちらはBL色は殆どなく、ピアノの代わりにマリンバとパーカッションを女性が演奏する。
緋色なので、ロビーでは赤いオリジナルドリンクを販売中。

今回は、青柳翔ホームズ×遠藤雄弥ワトソン。
先日D-BOYSを卒業した雄弥の新たな挑戦作だ。雄弥の朗読は『LOVE LETTERS』で観ていたが、今回の相手は男性で、青柳さんのことは殆ど知らない。『緋色』の原作も知ってるようで知らない曖昧さである。

1部は、ホームズとワトソンの出会いと最初の事件の物語。
2部は、事件の裏に潜む過去と事件の真相が語られる。
1部はワトソンの語りから始まり、ワトソン役の人が様々な兼ね役をして比重が大きい。マリンバやパーカッションが世界観を彩り、場面転換やポイント代わりに効果音を付ける。
2部になるとバックの本棚が隠れ、暗い照明の中でホームズ役の人が過去を語っていく。現在に戻ると再び本棚が上から降りて、ホームズから真相が暴かれる。全編、赤い照明が印象強く残る。

右手に雄弥、左手に翔さんが座り、二人とも右脚を上に組みながら朗読。2部で警部になった時、雄弥が脚を大きく広げて飛びつくように喋ったが、その後はまた脚を組んだ姿勢を維持。
翔さんのゆったりと腰掛ける所作はいかにもホームズらしいゆとりを感じ、役によって色んな声や表情を見せる雄弥はとても新鮮に映った。
あまりに多くの兼ね役をする雄弥が女性役までやろうとするところを、翔さんが自分がやろうとして出した声が全然女性ぽく聞こえず、会場から笑いを誘った。雄弥の女性声をもっと聞きたかったな。

知性派で人間味のあるホームズと、誠実で力強く支えるワトソンという感じ。
1部のホームズは少々やんちゃで自由に見え、彼に好きなようにさせる大らかなワトソンに父性を感じた。雄弥、ここでもお父さんかw。
二人とも最初から互いを肯定的に見ていて、少しずつ理解しようとする関係で、掛け合いも息ぴったり。時おり喋りながらお互いを見合って、相手のことを考えようとする思いやりが見てとれる。
とてもあたたかい印象の二人で、聞きながら安らかな世界観に包まれた。

キャストによって色んな雰囲気が楽しめそう。
再来週は、『薄桜鬼』コンビと『ゴーカイジャー』コンビを観れたらいいな。

物語としては腑に落ちない点が色々あったが、ほぼ原作通りなので仕方ない。
シリーズはまだまだあるので、続編の朗読劇を色んなキャストでやりそうだ。
何しろキャストや劇場の拘束力も少ないし、衣装やセットや予算も少なく済むし、男性二人でこれだけ集客力があるのだから、こんな美味しい劇をこれっきりで終わらせるハズはないw。
『スリル・ミー』の再演も決定したし、銀河劇場へのどこでもドアを切実に欲しいw。
舞台『真田十勇士~カッコ良くなきゃ死ぬだけさ』東京初日を観てきた。

昨年12月上演された『真田十勇士~ボクらが守りたかったもの』を、殆どのキャストや演出を替えての復活再演。銀河劇場からスペースゼロに変わったのは正解だ。
先にあった大阪公演直前、急遽“霧隠才蔵”の配役交代があり、パンフからページが無くなっていたが、チラシはギリギリ間に合ったようで配布してくれた。

今回はパンフ付き特別シート。
前3列を潰して舞台にしたため、段差のある観やすい前方席だ。
何といっても今回のキャストは私の好みが出揃った豪華さ。配役もぴったりで、衣装も前作と比べて美しく作り替えられている。
冒頭の全員集合な立ち回りシーンは、どれも目移りしそうな勢いで、ドキドキしながら見守った。殺陣やアクションは見応えのあるシーンが多く、深みのある芝居も見られ、個性も際立っている。

井出卓也の佐助は明るく純粋。根本正勝の穴山は穏やかな知性派で、時おりドジな面も見せるのに、殺陣がめっぽう格好良いv。伊崎兄弟の三好入道双子はピタリ合わないところが愉快で、強気の右典に弱気の央登の関係が新鮮。桑野晃輔の根津はあっけらかんなムードメーカーが楽しい。白又敦の鎌之助が愛らしい芝居で良かった。城田純の六郎は人情味たっぷり。
吉田友一、森大、鬼束道歩は、前作から続投。役と同化して安心して見れる。森さんの殺陣が実は一番秀逸。
急遽務めることになった鈴木信二の霧隠才蔵はニヒルな感じで良かった。兼崎健太郎の真田幸村は凛々しさの中に愛嬌があり、声や台詞も上手くてよく似合う。
木下ほうかの家康は声が高めだ。
雪乃を演じた穂のかは、芝居や所作や動きはまあまあ。今回は可憐さより肉体派なのか、太くて可愛らしく見えなかったのが残念。

前作と同じように、キャラクターの関係性が中途半端なのが残念だ。三好兄弟と鎌之助、小平太と六郎の関係はよく表現されて淡い感動を呼ぶ。だが穴山と根津の関係にもう少し深みが欲しい。雪乃と鎌之助も、最後は姉弟の描き方が不十分。佐助が幸村よりも雪乃にぞっこんだったのも納得しがたい。家康と半蔵の関係が密に描かれず、キャッツアイと頭領の関係がウザい。
途中で豊臣方の声が出てきたが、前作と同じキャストらしく、宮野真守らの声だった。

前作も思ったが、せっかく集められた腕も頭も優れた真田十勇士たちが、思ったよりも弱くて、格好良く勝ってる姿があまりない。あんなキャッツアイの女たちにメタメタにヤられちゃうのもつまらない。
そして意外と出番が少なく、最後までジクジク悩み怖気づく佐助よりも、強い相手にも臆せず向かっていき、最後は立派に務める雪乃のほうが印象に残る。こんなストーリーなら、主役は佐助じゃなく雪乃だと思いたくなる。
時限爆弾音が激しくなるのに、いつまでもグダグダと会話してたりと、くどくて苛立つシーンも少なくない。スピーディーでテンポがいい反面、急に失速して人情を強調させるので、集中力が途切れたりもした。

真田幸村が言った「笑え」が作品の根幹を貫く。どんな困難な時でも、前向きに生きる熱い魂。それはよく描かれていて心揺さぶったが、物語に上手く昇華されていないように思った。
みんなカッコ良かった。でも真田十勇士そのものが、徳川方に抹殺された破滅の集団なのが切ない。

カテコで全員が立ち並ぶ中、話すことは考えてないと笑うイデタクがマイペースで可愛らしかった。トークのお当番を指名すればいいのにw。
休憩なしで2時間15分は結構なボリューム。
1公演に相当の体力と気力を使いそうなので、千秋楽まで無事に疾走して欲しい。
『僕等の図書室2~みんなで読書会~』昼&夜を観てきた。

6人の「国語の先生」たちによる朗読会。
春に大阪であった「ぼくとしょ。」には行けなかったので今回が初見。
新しい作品もあり、「鍋」キャストの絶妙なチームワークが披露される。

小学校の授業形式でスタート。「起立」「礼」から「先生さようなら」「皆さんさようなら」まで、我々“生徒”も一緒に実行w。
物語は6篇あり、1公演で3つずつ。2公演は観たくなる。

観た作品と出演は以下。メインの先生に、サブとして二人の先生が入る。
D 『沖田総司』井深克彦(かっち先生)
C 『ピーターパン』中村龍介(りゅう先生)
A 『三銃士』村井良大(ムライ先生)
F 『ピノキオ』井澤勇貴(ゆーき先生)
E 『走れメロス』大山真志(まぁくん先生)
B 『智恵子抄』滝口幸広(タッキー先生)

朗読といっても、8月に観た『貧の意地』みたいに、動きあり、踊りあり、歌ありで芝居と殆ど変わらず。Eなどはリーディング・ミュージカルとして成立し、汗だくで歌いきるミュージカル俳優には思わず拍手w。
メインの先生は其々作品キャラの衣装で登場。りゅう先生の緑のトレーナーや、まぁくん先生の古代ギリシャ風と頬紅が愉快だ。
作品の繋ぎは、他先生方の独り語りコーナー。ギャグあり物真似あり歌あり踊りありと、先生の個性とアドリブが淡々と炸裂。どうやらみんな、金八先生と3年B組に憧れているようだw。
照明や音響が素晴らしく、楽曲も担当した日野悠平のピアノの旋律が美しく力強く世界観を彩る。

朗読だと役者の力量がいっそう顕著に表れる。発音発声が明瞭で聞き取りやすく喋る人は、えてして芝居も上手い。
一人何役もこなすことになるが、声優ばりに声や喋り方を巧みに変える人もいれば、表情や動きがコロコロ変わる人もいる。
耳や目を通して、いかに創造的に楽しませ、心を揺さぶらせてくれるかが鍵だ。

昼で一番面白かったのは、初出しの『ピーターパン』。穴吹一朗の現代風にアレンジされた脚本が痛快で、ピーターと兄弟とのやり取りに笑いがいっぱい。ヤンキーなピーターとフックを兼ねたりゅう先生がクール。登場人物がいっぱいの『三銃士』では、一人6役を声と表情で次々と演じて見せたムライ先生に喝采。
夜で面白かったのは、ゆーき先生の好演とムライ&タッキー先生のサポートも冴えた『ピノキオ』。ゆーき先生が唄い踊るサマは、劇団ひまわり公演の馬場徹のピノキオを思い出させたが、ラストでもっと感動してしまった。笑いと楽しさのある作品の中、直球ストレートで異質だったのが、前回もやった『智恵子抄』。有名なフレーズの数々を咀嚼させ、檸檬の酸っぱさが口中に広がり、あらためて物語の内容を噛み締めた。タッキー先生は主人公の感情の高まりを豊かにぶつけて、熱っぽさにこみ上げるものがあった。

エンディングは全員で唄い踊る「スタートライン♪」。みんなの踊りが青春ドラマで熱い。下駄のタッキー先生は足袋で踊る。左右の客席に降りてくれるので、笑顔でハイタッチもできたりw。
告知があったり、音楽の日野さんは無言だったり、タッキー先生が天然だったりと、最後までまったりな楽しさだった。
キャストの色んな魅力が垣間見れるし、作品も面白いし、これはクセになりそう。
第3弾が東京であれば、また観に行きたいものだ。

終演後、パルコの花屋さんでチケットを見せると、花を2~3本貰えるサービス。
舞台『阿呆の鼻毛で蜻蛉をつなぐ』を観てきた。

演出:赤堀雅秋と脚本:河原雅彦の初のタッグで注目を浴びた問題作。
お二方のファンでもないので関係ないが、今回はアミュメンらが挑戦しているので興味をもった。

とある片田舎で起きた連続通り魔殺人事件をめぐる人々を描くブラック・サスペンス・コメディー。
真夏の暑さで町内のみんなは気がヘンになったのか。血まみれのナイフを見ても笑いが起きたり、笑いすぎて転げまわったりと呆然とさせる。“笑い”がこんなにも不気味でキモイとは思わなかった。
洪水を予知しノアの方舟で脱出したいと願う愚かで激しい者たちと、日常の営みに甘んじて明日を夢見る者たちとを同列に描くところが残酷。彼らを一緒くたにしていく、切ないレクイエムの話でもあった。

上段下段で4場面が作り込まれたセットがよく出来ている。照明で場に焦点が当たるスピーディーなテンポだが、照明が当たらない場の人物の動きにも目がいく。
映像も斬新で、特にオープニングの格子やタイトルがクールで印象的だ。
時おり聞こえる海の底のような濁った音や、じとじとと蔓延する雨音など、水にちなんだ音響が世界観を包括していて面白い。
イルカが出てきて、クジラに憧れる、水の話でもあるのだが、タイトルにある蜻蛉は影も形もない。蜻蛉の幼虫は水の中から生まれてくるからだろうか。

橋本淳は『温室』みたいに動かない芝居と激しく発奮する芝居との二重構造で、ひりひりした危うさがある。パンツ一丁で着替えもしたが、半尻まで披露するユニークさだ。
イカレトンチキの平田裕一郎、純粋真面目な植原卓也、クロスワード狂いの栁澤貴彦、マッドドクターの板橋駿谷と実力もある粒ぞろいのキャストなのに、すべてのキャラクターが狂気と紙一重でうんざりする。

キャストの好演よりも、キャラクターの気持ち悪さでリピートしたくない作品だ。
先週の『阿呆浪士』の満席と比べて、後方がスッポリ空席状態。アミューズ出しても売れないらしい。
NODA・MAP(野田地図)『エッグ』を観てきた。

1日にリニューアル・オープンした東京芸術劇場のプレイハウス(元・中劇場)での初観劇。
毎回当日券が発売されてるそうだが、この日もズラリと長い列で補助席や立ち見もいっぱい。
しかし名称や表の外装は変わったのに、客席そのものはあまり変わっていない。補助席があるため狭く移動しにくい。前の人の頭が邪魔でステージが見え難く、ずっと体を横にずらしながらの窮屈さ。おまけにキャストの台詞が聞き取り難い。はじめからステージに集中できない状態だ。
ホント、これじゃ改修前のほうがよかった(by芸術監督)。

野田秀樹の新作は、過去の事件と架空のスポーツで、現代の日本を鋭くえぐるという趣向。
そのためには、寺山修司の名前だって短歌だって出しちゃう。幻の脚本だってでっちあげちゃう大胆不敵さ。もちろん芸術監督としての自分も登場させる目立ちたがり。おまけに愛人だってフェイクさせる厚かましさw。
時空がどんどん過去に遡り、スポーツと歌がいつの間にか戦争と細菌兵器に変わっていき、どんどん頭が置いてけぼりにされる。混沌とした場面や中だるみもあり、もどかしさと分り難さとつまらなさに拍車がかかり、中盤までは眠気に何度も襲われた。
前に観た『南へ…』のほうが、まだ焦点が定まっていて分かりやすかったわ。

印象に残ったもの。
深津絵里のツンデレ芝居と綺麗なのびのある歌声が意外と魅力。
仲村トオルの筋肉隆々のボインな体にビックリ。遠くからだと作り物に見えるw。
妻夫木聡が一段と若々しく見えたw。
藤井隆、大倉孝二のカマっぽさが絶妙。橋爪功はいかにもな鬼畜。秋山菜津子はナチス系を意識か。

たくさんのロッカーを移動させたり、ビニルシートを使ったりと斬新でユニーク。
椎名林檎の音楽が耳にじんわりと残る。
白い卵、生成りな原稿、白と黒の衣装と、視覚的な刺激もある。
演出的には面白いのだが、脚本は重苦しさが先行して素人への優しさが足りない。
1回きりの観劇なので、物語の深みは理解できないままで終了。
リニューアル記念なのだし、観終わった後、疲れよりも元気を与えてくれる話が欲しかった。
シス・カンパニー『騒音歌舞伎(ロックミュージカル)ボクの四谷怪談』を観てきた。

橋本治の破天荒なストーリーを、蜷川幸雄がエネルギッシュに演出。
1970年代のファッションで、室町や江戸の時代を駆け抜ける。
「ロック」と「お岩さん」をかけていたのかw。
最初は「bambino」と「歌舞伎」が混沌としていて、人物も多彩で目まぐるしい。
『大江戸鍋祭』に近いようで、『阿呆浪士』に近い「四谷怪談」というべきか。時代的にも裏表の関係なのが興味深い。

下ネタやホモネタ、エロやペテンもあり、コワイもの見たさの本能を擽られる。
グダグダごちゃごちゃ、賑やかに壮絶に色々とあったけど、最後は主役の独り喋りで、広げた風呂敷をちゃっちゃか畳む。生きてた人も強引に死なせちゃう。まるで積み上げてきた積み木を一気に破壊する感じ。
全員がアレを手に持つなら、キャストが動かないと回らないじゃないw。動いてこそ、時代も心も動く。
キワドイ祭を長く長く見せられたような感じだった。好みがわかれるところだ。

あの人やこの人の歌や踊りが見れたのは貴重。
歌下手を自認していた勝地涼が、のびのある声でちゃんと歌えていてホッと安心。ソロはなかったが、ちゃんとハモらしていてよく合ってる。特に佐藤隆太と唄った「テーマ・ソング」が馴染んだメロディーラインで楽しく、二人の踊りもキュートだった。佐藤さんよりは勝地くんの踊りのほうがバッチリ。芝居のほうも新感線の時よりもっと深くて、ポンポン変化していく表情が絶妙。びっくり箱みたいな魅力と面白さをもっていた。
蜷川さんに歌不安を公認された小出恵介は、マイク調節もあって一応こなしていた。持ち歌は1曲らしいw。仇討と出世欲に邁進する姿は『クールの誕生』のモーレツ社員と似てるが、とってもイヤ味だ。
勝地くんが上半身裸になったのに、小出さんはズボンなしの下半身をさらしてた(笑)。人を見下す男とダメで阿呆な男…どちらがいいかと問われれば、女は後者を選ぶんじゃないかな。

ミュージカルな歌い方じゃないのが多い中、栗山千明はパワフルでまさにミュージカル風。谷村美月もチャーミングな声がよく出ていた。
「フケセンじゃない」三浦涼介は元ウリセンだし~と似た役どころに苦笑したが、二色三色の声を使い分け、歌もダンスもクールにこなしていた。
尾上松也の歌舞伎な体が異質な感じだが、熱気の中でまどろみを与えてくれるからフシギ。お岩の歌が実は一番明瞭で聴きやすく、すんなりと染みた。
流れ流されの伊右衛門で掴みどころのなかった佐藤隆太だが、ラストの長台詞はよくこなして上手い。でも、芝居としてはつまらないな。
若手“七人の侍”と配してたが、あまり意味はない。三浦くんは勝地くんや小出さんとの関係性もなく、佐藤さん以外みんな出番が少ない。

麻美れいの歌に隣のオバサマが喜んでいた。瑳川哲朗の歌もとても上手い。
でもベテランの中で最も目立った存在が勝村政信。一瞬で勝村ワールドに引き込んでしまうあの手練手管に脱帽である。
場面ごとに老人老女が登場して動くが、メインが隠れたり集中できなくなったりして邪魔にも見える。
頻繁な通路使用に鏡や木馬が出たり、舞台奥の開放など、相変わらず大胆な蜷川演出。電光板に映し出される場タイトルや歌詞は親切。
ドット柄の揃いのタンクトップが意外と面白かった。ロビーで二千円位で販売すれば売れそうだw。

最後のカテコで、メインどころがコソコソ何か喋っていたが、突然勝地くんが舞台下に降りて、服みたいなのを拾って戻った。どうやらお袖ちゃんの服らしく、爆発か何かの時に下に落ちてたらしい。さっと回収する姿が可愛かった。

良くも悪くも好みが分かれる舞台。私はキライではないが、好きともいえない。
蜷川さんは大々的な花火で打ち上げたが、本来は小劇場向きの脚本かもしれない。
あと1回チケットを取ったが、キャスト目当てとしても微妙。
舞台『タンブリング vol.3』凱旋公演 千秋楽を観てきた。

満を持しての赤坂ACT。
私の中では8月の東京公演で既に消化された内容ではある。
でも今回は、タンブリング観劇史上、一番前方席を頂けたのでハズせない。
それに、大阪公演で負傷し降板した木戸くんの代わりを見届けたいとも思った。

大学4年の水沢拓ら登場人物にとっても、柳下大らキャストにとっても、これが最後のタンブリングになろう。
芝居のひとつひとつ、試技のひとつひとつまで、渾身の力が注がれていたように感じた。

同じTBS絡みとはいえ、先日観た『ハイスクール歌劇団★男組』と見比べると、メッセージが明確に打ち出されて、ドラマとしても見応えがある。
「ごめんなさい」「ありがとう」何度も出てくる嬉しさ。若者からは、こういう素直な言葉を聞きたかったのだ。柔軟や練習シーンも何度も出てくる。大会の派手な試技までの小さな道のりを観客は欲するのだ。
「ムリだと思ったことができた」喜び。「あきらめない」強さ。「ダチは見捨てない」思いやり。新体操に裏打ちされたキャストの芝居が、本気のホンキに見えてきて心を打つ。
現代の大学生という設定が、なおさら子供たちの姿とも重なり、登場人物の心に寄り添ってしまう。夢に向かって頑張ろうとする水沢たちより、いったんは夢を諦めてしまう馬場徹@木下のほうが現実味があって切なく思った。
「飛べることより、飛ぼうとすることが大切」は、オバサンになっても元気と勇気を奮い立たせてくれる言葉だ。
Honey L Daysの「Message」や「まなざし」が場面を色濃く包む。
前回以上に、ほとばしる彼らの思いが真に迫ってきて、またも涙してしまった。
要所で咲かせるプロの新体操の試技も、言葉も出ず見入ってしまうほど素晴らしい。もうこんな間近で拝むことも当分ないのだろうな。

木戸邑弥の代役で急遽入ったのは、舞台版vol.2を経験した鍵本輝。チームにしっかりと溶け込んでいて、木戸くんとも雰囲気が似ていて、思わず顔を確かめてしまうほど良かった。考えてみれば、鍵本くんの芝居は『絆』と交互に観てきたので、木戸くんよりも馴染みがあるかも。膨大な台詞の掛け合いのみならず、新体操でもしっかり戦力入り。体の柔らかさにも驚かされ、vol.2では気づかなかった魅力も引き出されていた。

演出面ではちょこちょこと変化。ゲストが持ってくる設定のレオタードは、今回はゲスト無しなので、水沢の高校の時の仲間がかき集めてくれたという設定。タイムマシンとかよりはマシかw。それにしても左手側の芝居が多く、通路も左手だけを使用していてちょっと残念。
クライマックスの試技の内容も少し変わっていた。鍵本くんが入ったためもあろうが、とにかく無事に終わらせるため難易度を低くしたように見えた。石井正則@春山が後悔した「無難で安定した試技」とは逆パターンになったが、これも仕方ない。彼らは選手ではなく役者なのだ。
月岡@佐々木喜英の手首や指にテーピングがしてあった。稽古でも真剣に取り組んできたのだろう。トモのみっつバックは隼のシーンで綺麗に見せてくれたが、鶴島シーンではあえてやめていたようだ。

カテコは3回で堂々としたスタオベとたくさんの拍手。
座長のトモはいつまでも真面目な顔で挨拶。木戸さんの代わりに入った鍵本さんがいなかったら凱旋公演はできなかったと言い、鍵本さんを先ず讃えて拍手がいっぱい送られた。毎公演怪我がないように無事に公演を終えるようつとめていたと語り、他の公演以上の神経を使ったのが伺える。最後は仲間にスタッフに観客に感謝を述べて終了した。
舞台袖ではける時、みんなは笑顔で手を振ったりしてたが、トモはあくまで真面目な顔。出る時に右拳を突き出して友達の印w。丁度目の前だったので、思わず私もやっちゃったw。

大千秋楽記念で、キャストによるお見送り。1階後方からなので、順番待ちで結構時間がかかる。その間、幕が閉じた舞台の向こうでは撤収作業中。
新垣里沙ら女性キャストに若手男性キャストが出揃い、最後のトモにまた右拳を突き出してみたら、笑って応えてくれた。帰りにまたビタミン炭酸のお土産。
あれこれ3時間もかかったが、心が満たされる良い舞台を見届けられて良かった。
新感覚・音楽朗読劇『CROSS ROAD(クロスロード)~悪魔のヴァイオリニスト ニコロ・バガニーニ~』を観てきた。

藤沢文翁が作・演出を務める“新感覚”シリーズの朗読劇。芝居と音楽が見事に融合するエンタテイメントだという。
前2作に出演した山寺宏一と林原めぐみに、今回は元宝塚トップスター紫吹淳が主役を演じる。
紫吹さんファンのおかげで、とても観やすい席を頂いた。感謝です。

19世紀のイタリアで、悪魔のヴァイオリニストとして名声を高めたニコロ・バガニーニ。彼は音楽の才能と引き換えに悪魔と契約、自らの命を引き渡す100万曲目に向かって、切なくも過酷な運命を生きる物語。

開演前から雨音と稲光が会場をしっとりと包み、不気味で暗い世界観を創りだす。
音楽監督の土屋雄作自らCasanova Stringusを率いて、ナマのオリジナル楽曲を奏でる。時にバガニーニの演奏曲として、時に場面を彩り場面を繋ぐ間奏曲にもなり、音楽の部分が作品の半分を占めているようだ。
赤いライトで悪魔をイメージさせたり、バックの映像に炎を出したりと、音響と照明と映像のコラボがとても素晴らしい。
その中で、演者3人の豊かで明瞭な声が響き溶け合い、芳香で美しいドラマをたっぷりと紡ぐ。
音楽ファンはもちろん、演劇ファンや声優ファンにとっても、贅沢で満ち足りた舞台に仕上がっていた。

演者は黒っぽい当時の衣装風に身を包み、左から山寺さん、紫吹さん、林原さんの順番で立ち座る。
紫吹淳は『源氏物語』に続く男役のバガニーニ。腹から出す声がとても凛々しく聞き取り易い。1幕は長い上着のボタンを締めてたが、2幕からはボタンを外して長いチーフを巻く。
山寺宏一は執事アルマンドなど6役をこなし、悪魔アムドゥスキアスの時には不気味な佇まいを見せる。他にも様々な楽器の音色をあてたりとムードメーカーぶりも発揮。山ちゃんの喉は何となく本調子に見えなかったが、それでもたくさんの声で舞台を支えていた。
林原めぐみはロマの女性ミーシャなど3役。「ニコ」と優しく呼ぶ母親役が絶品で、ミーシャとの切り替えが見事。長いドレスと帽子と白手袋でチャーミングな印象だった。

2人ずつの掛け合い芝居は、ドラマCDのようで見応え聴き応えがある。
アルマンドとミーシャの回想という形でドラマは進行。ミーシャが絡むと、コミカルで愉快な雰囲気になる。ところが悪魔が絡むと、一転ヒリヒリした緊張感が増す。山寺さんと林原さんの演じ分けがスゴイ。
バラ園。ブルーベリーのジャム。コイントスの裏表。カデンツァ。100万回の曲。
弾けば弾くほど自らの死に近づく皮肉で壮絶な運命に苦悩するバガニーニ。彼と数奇な交わりの後ようやく触れ合うベルリオーズ。そして息子ニコロをどこまでも信じて愛する母テレザ。
1幕目は物語の流れに付いていくのにやっとだったが、2幕目からはキャラクターの心情が繊細に語られ、一気にラストへと高まっていく。
人間味のあったバガニーニ。音楽を愛する心。十字路の誘惑と回避。人間の弱さと強さ。「音楽は自由なの」母親の言葉が勇気となって蘇り、後半は心が揺さぶられて何度も涙してしまった。
音楽と友情と家族愛を描いた、切なくも美しいヒューマンストーリーだった。

休憩挟み1幕と2幕で約2時間半。2幕はあっという間だった。
カテコの拍手の中、普通に戻った山ちゃんからメンバー紹介。演奏者の土屋さんが男前。チェロの方はコルダで見覚えがあり。
CD付きのパンフを宣伝した後、紫吹さんも薦めて自らのCDも宣伝する山ちゃん。たくさんの拍手で満たされた。

CDなしで安いパンフが欲しかったな。リピーターも多く、あと1回観てもよかった。
山ちゃんとめぐみさんといえば、最近オールナイトで観た『カウボーイ・ビバップ』かな。アニメでも不動の活躍を見せており、声優ファンも集まっていた。


終演後、紫吹ファンの方と一緒に恒例の出待ち。
本日は早朝からドラマの撮影があって、ちょっとお疲れかもしれない紫吹さん。
1時間もしないうちに、男役とは反対のエレガントなスタイルでおいでになって、ファン一人一人と目を合わせてくれた。今回は初のお手紙を書いたので渡せて良かったw。
『ハイスクール歌劇団★男組』にもゲスト出演するので楽しみに待とう。

舞台 SING!

2012年9月21日 舞台演劇
舞台『SING!』を観てきた。

作・演出は山口喬司。2009年に上演された作品を、パワフルなキャストとスタッフで再編成した、超青春合唱コメディ。
第24回池袋演劇祭参加作品。

先週の『テガミ』と同じ劇場だが、超満員の客席で人気の程が伺える。
今回は三上俊が出ると急に告知があり慌てて取ったので後方席。同じようなファン仲間が周りにいっぱいだ。

とある工業高校が舞台。転入生の乙貝は合唱部を立て直そうと奮闘、やがて優勝常連校の女子学校に、合唱コンクールで闘いを挑んで頑張る話。
4月の『合唱ブラボー!』は男子高校生だけの話だったが、こちらは女子高校生と関わり対峙していくので、ノリとしては『ハイスクール歌劇団☆男組』に近い。
メンバー集めや紹介がじっくりと描かれ、メンバーの家庭事情なども絡ませて、ラストの怒涛のコンクールへ流れてからエピローグ。色んなことが盛り込まれ詰め込まれての密度の濃い休憩なしの2時間半。
ちょっぴり長くも感じたが、まずまずの熱くて爽やかな青春ドラマだった。

メンバー集めはちょっとふざけてはいるが、粒ぞろいで個性的。
『タイバニ』のイワンで好演した高崎翔太の主演作。翔太の明るく大らかなテイストがよく馴染む。裸のシーンがあったが、さすがに筋肉があり鍛えられている。
元サッカー部の設定の椎名鯛造も劇中で脱ぐが、これまた腹筋が見事。
運動力バッチリのこの二人が、今回はあえて声だけで通すが、アクションがないのが勿体無いところ。

1時間半過ぎてやっと登場したのが、アイドル芸能人でモッテモテの役の三上俊。どこか『abc』と似た風だが、真面目で友達思いでノリのいい性格。『銀英伝』で共演した誠治郎が『歌劇団』で2年生なら、ミカシュンは1年生だ(笑)。本名がポイントで、その度に倒れたり起き上がったりと柔軟なバネを見せて溌剌。歌声もよく響いた。
喧嘩番長役の北代高士は赤い短髪でいかついが、実は弟思いで友達思いの優しいヤツ。彼の弟が耳も聞こえず声も出せない重い障害を持ちながらも、兄について合唱部に入るというくだりがいじらしい。この弟の存在が、平坦なストーリーにキラリとした輝きを放つ。
合唱は、落ち込んでいた者や挫折した者や引き篭っていた者や皆から毛嫌いされてた者をもチームにする力がある。合唱はすべての人たちに希望を与えるのだ。

体力トレーニングや稽古場面もある。コンクールも特別な服はいらず、ただ黄色いチーフを巻くだけでひとつになれる。
女子高生合唱部は決してお嬢様ではなく、女子を逸脱して個性的。彼女たちのハーモニーが何度か場を彩り、場を繋ぎ、心を満たしていく。
「はじめてのチュウ」とかアニソンも何度か使われ、大好きな「ビリーブ」や「さくら」は一緒に口を動かして歌いたくなるほどだ。
小さな舞台なので、手動によるセットの転換が大変そうだったがご愛嬌だ。ドアやベンチもすべて手作り。ミカシュンたち役者も仕込みを手伝ったらしい。

ラストの急展開は漫画でありそうなお涙頂戴で、私は頂けなかったが、それでもすすり泣き声が耳に入った。ドンデン返しを信じてたが、もう少し後味を良くして欲しかった。


終演後トークショー。
男性メンバーが公式Tシャツを着て出揃う中、写真やパンフなど物販を宣伝。
男子たちの中には同じパンツを揃えて履いてたりと、仲の良さが見てとれる。
そして今日は、翔太の誕生日。音楽や手拍子の中、会場みんなで「ハッピー・バースデー」。24歳になったと嬉しそうに挨拶する翔太。ちなみにお膳立てしてたピンクのアフロの方は演出家さん。
ちっちゃなケーキが出てきたが、挨拶する翔太にイタズラしようとケーキを動かすミカシュンやキタシロたちw。それに気づく翔太。
最後は翔太の挨拶で締めて終了した
『ミュージカル テニスの王子様 青学VS立海』凱旋公演に行ってきた。

7月の東京公演以来のテニミュ。
地方公演からのグッズがちょこっと増えていた。
開演前のアナウンスはリョーマ。

演出でちょこちょこと変更してたところがあった。
前よりは増えていたアドリブ合戦。特に六角は嬉々としていて楽しい。
立海は最初のほうは声の出がいまひとつだったが、部長と真田の歌以降はよく出て気にならなくなった。
青学は最初から快調で一点の不安もない。声もよく出ているし芝居も巧みだ。
キャラクターの成長がそのままキャストの成長とも重なる。特にリョーマ、乾、大石と菊丸、海堂。キャラクターは1試合ごとに進化を遂げるが、長いスタンスで見守ると、それは成長という形で現れる。上手くいえないが、一時的な進化よりも、持続していく成長のほうがいいと思う。

風林火山VSサムライの和風な対決はとても見応え聴き応えがある。
ラケットを刀のように見立てるダンスもキレッキレでカッコイー。
前よりも照明がクリアに使われていて、舞台を明確に引き立てていた。でもたまに、ライトの光がまともに目に入って眩しくてたまらなかったが。

「Good-bye」の「オレは先にいく。みんなは其々の道をいくんだね」の歌詞が、まさに青学メンバーの気持ちを綴っているようでジンときた。「That’s My Future! Let’s Go!」の「ありがとう」もしみじみ届いた。
全員揃ったところで、リョーマが凱旋公演を迎えての立派な挨拶。1ヶ月と半月ぶりか。
カテコではリョーマや仁王がこっちに来てくれた。

今回が私にとっては、現・青学メンバーの舞台を観る最後。
Farewell Partyもあるが、あれはイベントだし。
しかも席は今回とほぼ同じ(^^;。う~ん。

終演後ふと後ろを見たら、イケメンが3人ニッコリと出ていくところ。あの涼しげな瞳は、アノ人だったw。
ドラマティック・カンパニー20周年記念公演『阿呆浪士』東京千秋楽を観てきた。

初日から全然知らなくて、知人に教えられて知ったのだけど、DC会員向けの抽選会があったのね。毎回当選者1名にサイン入風車を千円でプレゼント。楽は2名だったけど。ダメもとでも前2回はトライしたかった。

本日は前方サイドブロック。今回の舞台でスタッフ側に考えて欲しかったのが、前方のフラット通路側に置かれた補助席の存在。あそこに人がズラリと座られたら、サイド席の人はさぞ舞台が見辛いと思う。当日券なら尚更、階段上の後方に座布席でも設けたほうがよかったのではと思う。
幸いにも今回は、目の前の補助席に誰も座らなかったので、見難くなることはなかった。ありがたや~。

前回で書いてなかったこと。
前説と仲入りと後説の音声は、中尾隆聖と関俊彦が担当(録音)。仲入りの時の「うひゃうひゃ」が笑える。
三味線や小太鼓や拍子木の音が随所に入って軽やかな雰囲気。音響が良すぎるのか、序盤は音に隠れてたまに台詞が聞こえ辛い時がある。
納豆かき回しとか雪だるまとか犬の散歩とか、マイムが随所に入るのも特徴。ガラガラ、ピシャッとか擬音まで役者がやっちゃう。何もない空間を忽ちに広げられるのも役者の力量。ただ、南京玉すだれをやった通りが、突然に川に変わっちゃうところは無謀(笑)。
キャストの楽曲は、歌謡曲の替え歌ではなく、曲調と歌詞を変化させた歌で、30代以上には馴染みのあるメロディーばかり。魚屋八にはサラリーマン調がぴったり。キャストの声量はまだまだなので、ミュージカルといえないところが惜しい。
辞世の句にメロディーをつけて唄ったのが新鮮に感じた。意外と合って胸に染みる。

楽とあって、ちょこちょことアドリブも活発。
関さんが手に下げて持ってくる菓子袋は毎公演違うかと思ったら、同じのもある。
すずに見立てた内蔵助を黒兵衛がイジるシーン。今日はたんまりあって、やらせた原川浩明もやらされた中尾隆聖も、終わった後は息も荒く(笑)。
おかねが貞四郎にハッパをかけるシーン。くじらさんの声量に付いていけない田中啓之は、昨日今日と不調だったらしい。

緩急の関さんと中尾さんに、新しい風の田中さんが入っての、赤穂と江戸とを繋ぐ花火のような祭り劇。
笑いのあとに、ふっとこみ上げてくる切なさ。舞台には現れない「タクちゃん」に一番思いを馳せてしまう。今回も中尾さんのおっしゃる台詞に、何度も涙がこぼれてしまった。
『クールの誕生』ともあれこれ重ねられて、色々な焦点から観ることができた。
阿呆じゃなければ、クールになれない。
クールに見せるには、阿呆に見えなくてはいけない。
主観と客観の葛藤だが、大切なのは、今、自分が何をしたいかだろう。
自分自身が好きだからこそ、他の人も他のものもいっぱい好きになれる。
自分を貫いた生き方こそ、自分が思う、クールで阿呆な人生なんだと思う。

なんだかんだとあったが、毎回座席にも恵まれて、ホントに楽しく観劇できた。
『クール』よりは眠気が起きないし、舞台に集中できてあっという間だった。
残りは大阪公演。もう1回観ても飽きない舞台だ。でもま、お江戸の話はお江戸で観るに限ると満足しよう。


千秋楽恒例の役者紹介。中尾さんと関さんが交互に名前を呼ぶが、中尾さんが流れで「竹尾一真さん」と呼び、会場から笑いがこぼれる。関さんもフォローする中、「なんで、さん付けしなきゃいけないんだ」と自分ツッコミしててカワイイw。
演出された加納幸和さんも登場。初日もロビーにいらしてて、背も高い男前な方。小田木さんから花束が贈られ、加納さんの声でみんなで「一本締め」。目の前にいらした関さんと目を合わせる気分で、私も一緒に締めv。ところが中尾さんだけ三本締めまでいきそうになって、みんな笑い。
終了後みんながハケる中、最後に残った関さんが口に手をあてて投げキッスv。客席からも私も思わずキャー! いやいや、今回は右手の席でホントに嬉しい。

中尾さんの声で終幕のアナウンスが流れた後、鳴り止まぬ拍手の中、カテコで関さんと中尾さんが挨拶で登場。二人で握手をしてくれたかな。
二人が捌けた後、また中尾さんのアナウンスが流れて、客席からも笑いがこぼれる中、まだまだ拍手が続く続く。ついに登場してくれたのが加納さんで「もう脱いじゃってるんだけど」とw。法被を羽織っただけの関さんがひょっこり顔を出してくれたが、表情はまるで緊張した八さんみたいでチャーミング。「中尾さんも出てくるので、もう帰って下さい」みたいなことを言って、慌てて出てきた中尾さんは帯を後ろ手で押さえながらの格好。でも客席の満足気な反応を確かめて、二人とも満面の笑顔でお辞儀をしてはけて行かれた。
最後の最後まで楽しませてくれたお二人。そしてカンパニーの皆さん。
チーム阿呆浪士、バンザイ!\(^o^)/
Dステ 11th公演『クールの誕生』in PARCO劇場を観てきた。

紀伊国屋ホールで観てから早10日。
セットは同じだが、広々とした感覚がある。
今回は前方席のセンターブロックでとても観やすい。懸念していた煙草の副流煙もほのかに臭ってくる程度。『アメリカ』の時に懲りたのでホント良かった。

1960年代はアメリカでも日本でもスパスパ。
今回劇中でふと数えてみたら、みんなで煙草を20本位は吸っていた。毎公演そんなに吸ってたら、小道具としての煙草の予算も結構ヒビキそうw。屋上にはバケツも用意してあるが、ズッキー演じる矢部などはマッチも煙草の吸殻も潰して下に投げ捨てるからたまらない。今なら罰金を取られるところだ。

前方席とはいえ、今回も時々、眠気が出てくる場面があった。脚本というより、芝居の拙なさやつまらなさが要因かな。若いからこそ出せる熱さもあるが、芝居の不出来によって萎んでしまう火もある。
描くのも大変そうな腹踊りも、会場にはそれ程ウケなかったかな。顔を描くのだから、腹をへこませたり膨らませたりしないと面白くない。接待相手もウザいしね。

今回も客演の方々の尽力が大きい。
俵木藤汰の流暢な喋りと達者で愛嬌のある芝居が舞台を牽引する。永井秀樹のクセ者っぽい存在も貴重だ。三嶋絵里子は胸もデカくてお色気ムンムンだが、甘ったるい声とキュートな喋りがたまらない魅力。弘中麻紀はイヤミのないコメディセンスが愉快でチャーミングだ。
女性陣の当時の服装も見どころのひとつだろう。

ホステスもチームの一員だと調子のイイことを言ってた男たちが、土壇場で裏切り売ろうとする。
同じ社員なのに、年増女には興味はないと適当にあしらい、チームの戦力にも考えていない男たち。
当時の男たちは多かれ少なかれ、女性をこういう風に扱ったのだ。
だがその中で、妻も仕事も何もかも投げ捨てて、愛する女を選んだ男がいた。共に土下座をして仕事のサポートをする、健気な女の愛を知った男がいた。
彼らは男社会では阿呆に見えるかもしれない。だけど女の目から見たら、彼らは情熱にあふれていて、とってもクール!
登場人物の中でいったい誰がクールだったのかと問われたら、私は矢部圭介と近石守を押すだろう。

ラストで安達と岡田が互いの煙草に火を点けるシーンは、女子の妄想だと、煙草の先同士をくっつけ合って火を繋ぐだろうなと思うw。一条ゆかり先生の漫画にあったようなね。


終演後、“残業”ミーティング。
鈴木裕樹と山田悠介、講師の演出・山田和也による「講習会」。ズッキーもヤマダフードに着替えて登場。演出家の言葉なので、袖でメンバーが聞き耳立てているようだ。

今回どういう目的で演出されたか。D-BOYSメンバーがラッパ屋の劇団員に見えればいいなと思ってやったし、ラッパ屋の皆さんがD-BOYSのみんなに見えればいいなと思ったという。
この言葉でハっとした。『阿呆浪士』はDCメンバーをラッパ屋に見せるというより、花組芝居のほうに見せようとした舞台だったのかもしれないな。

事前募集した質問。
山田氏に稽古を経てみんなのこと。D-BOYSについては『テニスの王子様』がイメージにあって、テニミュやってたから歌も踊りもダメなんだろうと(苦笑)。アイドルが真面目にやっていると思ってたが、本気で芝居をやっていると好印象に変わったようだ。ズッキーや三上については戦隊ものに言及、イメージが変わったという。戦隊ものがお好きだったが、今はお子様も大きくなったと。
山田氏の演出について。物腰が柔らかくて優しい方。キツイだめ出しもなく、言わないプレッシャーもあったが、どんどんチャレンジさせてくれた。最後のほうでダダダとダメ出しを貰えた。ヤマダもズッキーも話し方がクレバーで分かり易い。
次に演出して貰うならどんな作品か。時代劇やりたいがミュージカルもとヤマダ。またコメディやりたいとズッキー。山田氏からは「ミュージカルですよね」とニッコリ。押されてズッキーも「ミュージカル俳優ですからね」(笑)。
ヤマダがテニミュやってなくて良かったと苦笑してたが、ヤマダはオーディションに落ちたらしい(受けてたのかw)。ズッキーからは、今のテニミュは歌も踊りもイケてるそうですというフォローもw。

最後に二人が残りの公演にかける意気込みなどを語って終了した。

明日の千秋楽はD-BOYSの加治将樹のラスト。私には本日が見納めだった。
でもまだ18日の卒業イベントがある。三人の晴れ姿を見送ってあげよう。
ドラマティック・カンパニー20周年記念公演『阿呆浪士』中日を観てきた。

今回は中ブロックの最前列!
初日は前方の真ん中で、中央に立つキャストの視線がたまに飛んできたけど、今回は遮るものは何も無しで、キャストの視線飛びまくりv。緊張しいの嬉しいので、眠くならずに済んだ。

今回はキャストについて。
先ずはオレンジの着物を着た関俊彦が登場。話しながら着物の裾を上げて、忽ちに棒手振りの魚屋八に変身するのが見事。女好きでお調子者なスケベ男と、赤穂浪士として勇ましく向かう男と、今回は関さんの二面性のある芝居が作品を席巻して面白い。話そのものより、関さんの流暢な台詞と達者な芝居に笑える。
八の女房幸には波岡晶子。関さんと波岡さんの夫婦役は何回目かな。幸は現実的でありロマンチストであり、どうしようもない浮気亭主の八をまだ愛しているところが良いよねぇ。
浪士として役者みたいに芝居がかった八とか、マグロのように寝転ぶ幸とか、どうも『クールの誕生』を思い出しちゃうw。脚本を書いた年に開きがあるとはいえ、やっぱり同じ鈴木聡氏の作品なんだな。

中尾隆聖は、風車売りに身を隠した大石内蔵助。“弥七”じゃないとこがイイ。
ひょうきんな動作や愉快な場面もあれど、今回の中尾さんは殆どシリアスモード。武士としての苦悩や葛藤や迷いをいっぱい溜め込んでいる。中尾さんの言葉や歌のひとつひとつにいっぱいジンときた。さすがに秀逸な芝居。
特に感動したのが、内蔵助と小田木美恵演じるお熊とのやり取り。中尾さんが口にする辞世の句が味わい深い。“タクちゃん”はきっと優しくてあたたかい人柄だったんだろう。二人と一緒に“タクちゃん”に思いを馳せて涙が滲んだ。
事件の発端となった内匠守は舞台には現れないので、余計にイメージが募る。今のところ『大江戸鍋祭』で内匠守を演じた矢崎広が頭に残ってるので、中尾さんと絡めて想像しながら観てるw。

堀本等は、吉良上野介で中盤で殺陣のシーンもあるが、前半は八の仲間の一八役。八の上をいくから一八か? 浪人スカピン役の田中完が二人の間を取り持つが、八の心意気をあげたりと結構重要な役どころ。
沢城みゆきは、小柄な体に声がよく通り、大石すずとして活発で頼もしい存在感。さすが舞台慣れしてて動きや台詞が明瞭だ。歌ももっと唄って欲しかった。所属する劇団子の公演と重なり声だけ出たり、DCの後はヘロQの舞台にまた出演したりと、声優として女優として超売れっ子である。
すずに肩入れしながら惹かれてしまう黒兵衛に原川裕明。とても逞しくてチャーミングなオジサマだ。

実はこの舞台の影の主役が、すずや黒兵衛と共に仇討ちのために江戸にやってきた浪人・田中貞四郎。同じ名前を演じる田中啓之は、10年前から親子劇場の『かきの木マン』としてずっと馴染んできた役者さん。DCの本公演に出たことは久しぶりだったかな。グーリーをやっつけるヒーローが、今度は大人のヒーローとしてメインをはる。凛々しく男前に成長したこと。歌も結構唄ってくれる。伊藤つかさ演じるお道とのラブシーンやラブソングがたっぷりあって照れそうになった。

酒井哲也、伝坂勉、関根宏次、河野智之、川島得愛、山田朋弘の若い衆が、殿中事件を世間話のように説明したり、町人や浪士に扮したり、場を作ったり盛り上げたりと大活躍。赤穂浪士の戦隊もどきのポーズが可笑しかった。皆さん実に達者で完璧。個人的には『ハリウッド再臨』で好演した川島さんをメインで見たかったか。
舞台は『bambino』以来に観る竹尾一真は、瓦版売りとして展開。前半のラップはもう少し語尾を明瞭にして欲しいな。沢城さんとはアニメ『H×H』でも1回共演してたかも。
お色気ムンな本美奈子とは『ハリウッド』でチラとお目にかかって以来かなw。
パワフルくじらさんとは岸野組でもしょっちゅう。
渡辺菜生子がDCに出て、今度はNAO-TA!プロデュース公演に関俊彦さんが参戦。中尾さんも前に出たから満を持してという感じ。WAKUプロデュース公演には中尾さんの他に斉藤佑介も出演。この調子でバンビーノのメンバーが増えていくといいな。

シーンタイトルのめくりは、全キャストがまんべんなく担当。
絵姿とか血判状とかの小物が全部、布で見立ててあるのも面白い。だが“紙”のキレ味が必要だなと思う場も時にある。
踊りのシーンがちらほらあったが、歌を盛り上げる今風なダンスがもう少し欲しいところだ。今回のメンバーで、格好良く踊れる役者が見つからないのが惜しい。

町人は、時にノリで浪士になれることはあっても、武士は、やっぱり町人になりきれないことがある。
哀しみと挫折、可笑しみと滑稽さ。誰かのための存在。チーム赤穂。“祭り”という言葉に妙な説得力。
『クールの誕生』ともちょっと似た感覚だ。阿呆もクールも結局は表裏一体なのだろう。
構成・演出が加納幸和、演出助手に水下きよし、原川浩明も出演。
ラッパ屋のレシピとDCの食材で、花組芝居が腕を振るった料理は、塩っ辛いけど甘くて豊かな、赤穂の海のような味に感じた。

明日はクールで、明後日は阿呆。交互に観ると、新しい発見がありそう。
abc★赤坂ボーイズキャバレー Spin Off『3回裏!』~自分に喝を入れて勝つ!~を観てきた。

『abc★3回表』の上演中、裏ではこんなことが起きていた!
恒例のスタッフサイドの話。
チラシ配りは、今回制作助手として戻ってきた柴(加藤良輔)。

主役はDVD撮影担当のサラリーマン榎木田(永岡卓也)。ヘアメイクの南(長谷川桃)と振付の宮久保(木野村温子)は健在だが、舞台監督や照明や音響などメインどころのキャストが大きく変わった。
昨年までいたStudio Lifeメンバーが今回は一人もいない(^^;。

まるでヤ○○な感じの鈴木省吾、聡太郎、根岸拓哉の舞台班の存在がユニーク。あっちゃん振付のダンスを3人で力強く踊るとこが見どころ。
永岡さんといい、今回は長身男が目立つなぁ。省吾さん、見た目はコワそうだが、瞳が綺麗でカワイイw。D2の根岸くんを今回の役でだいぶ認識できたw。
時に反発し合うも互いの仕事を理解している、照明の加藤と音響の坂部の関係がいい。三浦孝太は三浦涼介の実兄だが、役的には関係ないようだ。Z団の真山奈緒がガシガシものを言うが、心強くて結構スカっとする。
元bambinoボーイの柾木玲弥が、美術スタッフ赤石で出演する岡田亮輔に「ラーメン屋」兼業を尋ねてたがw、実は岡田くんが登場した時に私もそのことを知りたかったw。答えは関係ないらしい。
達者な女性陣もいるので、今回はいつにも増して淡い恋模様も展開。純情男たちの恋の行方も注目だ。

『abc★3回表』で最も大事件だったのが、本番中の突然の停電と帆の一部が焼失してしまったハプニング。
裏では、その原因と経過、そして舞台復活が生々しくも感動的に描かれる。
舞台を続ける意義と信念と誇り。
誰ひとり欠けられない現場スタッフが挑む姿が熱い。
彼らをバックアップする、利根川渡(柏進)ら役者の姿も熱い。
スタッフとキャスト、彼らを辛抱強く見守るお客がいてこそ舞台は成り立つものなんだと、あらためて知る舞台である。

最後はみんなで「abc★テーマ」。間奏のダンスシーンもバッチリ。女性陣が芝居とはうって変わって、バク転などダイナミックに踊る姿がカッコイー。
そして会場みんなでハンカチ回し。最前席だったが、目の前で良輔が狂ったようにハンカチを回して踊っていて大ウケ(^O^)。
裏があるからこそ表がある。表とはまた違った、面白くてほっくりさせる作品だった。
表でも裏でも開演前に流れたスキマスイッチの「ユリイカ」は、abc★とどんな関係なんだろう。アニメ『宇宙兄弟』がつい浮かぶのだがw。

終演後にロビー外で、劇中で大活躍したイザベルの撮影会。もちろん古郡くんではないw。

加藤良輔とはMASH UP!4やボーリングでまた会えるかな。
根岸拓哉のD2が総出演する『TV局中法度!』がスタート。
永岡卓也は『宇宙刑事ギャバンTHE MOVIE』公開が控える。
Stylish Shine!!プロデュース『テガミ』を観てきた。

藥袋一久の演出、山口信乃介の脚本。
国家機密レベル遺伝子研究絡みのある事件が起きてから10年近く。医療界の人間を狙う連続殺人事件の真相に、元刑事の男やマスコミらが迫っていく話。

素人には難解な言葉や説明が出てきて、はじめのうちは取っ付きにくい。
現実とセカンドライフの二つの世界観が混ざり合う。
登場人物も多数で、人間関係が複雑に絡んでいく。
謎と真相を追うサスペンス&ミステリー調だが、場の盛り上がりが乏しく平坦な印象。
メイン以外のキャストはいまいち見分けがつかなく、役者の芝居の差も大きい。
中盤までは何度も眠気が出てきて落ち着かなかった。後半以降はだいぶ集中できたが、ドロドロした焦れったさは続く。
青い稲妻のような光でみんなが倒れ伏すシーンが繰り返され、長くて飽きる(^^;。
「E=MC」や「パンドラの箱」のキーワードは面白いが、本筋に上手く繋がっていかない。
いまいち理解しがたい内容で、見終わった後も気持ちが消化しきれなかった。

お目当ては柄谷吾史! 『逆境ナイン』と同じ劇場というのも奇遇。
柄谷さんは白衣を翻して颯爽とした佇まいのキーマン。前半は殆ど説明役だが、巧みな声使いでとても聞き取りやすい。あの難しい言葉をちゃんと咀嚼させる。そして後半、思いもかけぬところから登場。
クールで知的で妖しい柄谷さんを拝むための舞台だった。

鳥羽潤はさすがの堂々とした存在感。北村悠が明暗を使い分けて活躍。
紅葉美緒は最初と中盤と最後という出番。学ランのせいかちょっと太くなったかな。
岸博之の芝居はじわりと伝わり味わいがある。


終演後トークショー。

柄谷さんも白衣で参加。3日目の感想に続き、質問コーナーへ。
好きなシーンでは、吉田くんの役が大好きだとちょっと再現(でも台詞違うw)。
秋ゆえにデートするとこは、清水の舞台から飛び降りてみない?と渡辺瞳さん相手に申し込みw。
紅葉狩りと言った美緒にウケたw。

最後は潤さんでなく悠さんが挨拶。でもTVの宣伝告知。
トークでやっと他のキャストに馴染めた。
ドラマティック・カンパニー20周年記念公演『阿呆浪士』初日を観てきた。

『クールの誕生』と同じ鈴木聡さんの作品。18年前の作品だとか。
DCメンバーに豪華客演を揃え、加納幸和さんの演出・脚色で味付けされている。
結局、今週はクールより阿呆を選んでしまった。

物語は、赤穂浪士をモチーフにした、お江戸を舞台の討ち入り騒動劇。
全15曲のミュージカル形式で、昨年の『大江戸鍋祭』が浮かんでくる。

ほろ苦くてちょっぴり切なくて、甘くときめかせてくれる、大人向けの群像劇。
現代の社会人の姿とも重なってくる。
江戸っ子気質を煽られて、時に笑って時にジンときて共感してと、あっという間の2時間40分だった。

個人的には、かきの木マンとグーリー対決がツボw。
「親の顔が見たい」の名台詞に大ウケ(笑)。
魚屋の八は、そのままクールの誕生かもw。

パンフはDVD付き。サイン入りポスターも販売中。
土曜日、東京千秋楽も観劇予定。
舞台『コーパス・クリスティ 聖骸』を観てきた。

アメリカの作家テレンス・マクナリーが98年に発表し物議を醸したという問題作の日本初演。
タイトルの「コーパス・クリスティ」とは、テキサス州の都市の名前であり、ラテン語で「キリストの亡骸」の意味でもあるらしい。

開演10分前から円形劇場の丸いステージにキャストが登場、楽屋のような気軽さで柔軟や会話をしたり客席にも座ったり。開演のベルを鳴らした後、役者名に洗礼名を与えられた13人は、白い衣装で再び現れて、もうアメリカの若者になっている。その彼らは、キリストの受難劇を現代アメリカに置き換えた芝居で見せますと客席に宣言。Dステの『ヴェニスの商人』とそっくりの劇中劇形式から始まった。

テキサスに住むゲイのジョシュアをジーザスに、彼と愛し合うジュダスをユダに見立て、12人の使徒ならぬホモ集団を描いた話で、同性愛を嫌う社会にキリストが抹殺される末路だが、確かに信者にとっては不快な内容だろう。
新約聖書はつまみ食い程度の知識しかないが、記憶にあるエピソードも盛り込まれ、印象的なシーンもあって、刺激的な舞台ではあった。
ただ、一部キャストの演技の拙さや演出の表現性が足りないのか、一度観ただけではストーリーやキャラクターをしっかり把握することは難しい。
至近距離で出演者を拝める旨味はあるが、座る位置によって観辛いカットもあり、逆に見え過ぎるキライもある。
観る人を選び、観る位置も選びたい、なかなか手強い舞台だった。

ジョシュアの渡部豪太は、柔らかい微笑みと輝きのある声と語り口で、誰からも愛されるカリスマ性を感じさせる。
ジュダスの窪塚俊介は、包容力をもったクール&ホットな神秘的な佇まい。窪塚さんは『歩兵の領分』から何度か観てきたが、外見の雰囲気が随分変わられて驚いた。
驚きといえば、アシタカなど声優業でも活躍していた松田洋治。すっかり中年の落ち着きを見せていて、内面を掘り下げるような充実感ある芝居だった。

ジョシュアとジュダス以外のキャストは、様々な兼ね役をこなすが、本役との切り替えが分り難く、キャラクターの混迷が起きる。衣装やメイクはそのまま小物使いもないので、婦人や少女には声や演技にもう少し工夫が必要だ。少年といっても二十歳以上に見えてしまうのも困りもの。
全般的に、芝居の上手い人といまひとつの人との差が大きい。台詞一つとっても、咀嚼して伝えられる人とただ発するだけの人がいる。途中で何度か眠気がおきたのも、芝居のつまらなさのせいもあろう。
創造的なステージを構築できる力量が全員に欲しいところだ。

ジョシュアとジュダスのセックスシーンは息を呑むほど耽美的だったが、座った位置からはジョシュアの表情が全く見えず、二人の思いにまで至らなかった。
結婚式をあげた使徒の二人、鷲尾昇と近江陽一郎のキスシーンは可愛らしく見えた。教え子の手の甲を定規で何度も叩くシスターのシーンは酷くて痛々しい。
教え子にしろ、殴られ打たれるジョシュアにしろ、振り絞る声がとても痛々しく真に迫っていた。
永山たかし、米原幸佑は、兼ね役のほうが印象強い。永嶋柊吾はスカートのイメージが残る。
プロムなどダンスシーンになると、途端に生き生きと踊りだす若手とあまり踊っていないベテランの差も注目。

最後に首縊り用のロープが降ってきたが、ジュダスはゆっくりとジョシュアの開放に向かう。あたたかい抱擁と拍手。
カテコのお辞儀は4段階に分け公平な一体感。
2時間弱は長いように感じたが、終わると複雑な気分に包まれる。昇華しきれないもどかしさ。中途半端な突き抜け感。
次はキャストをもう少し入れ替えて、演出にも改良を加えての再演を望みたい。
“STRAYDOG”Produce『へなちょこヴィーナス』初日を観てきた。

高橋いさを+小田玲奈の作品。
昨年好評だった舞台をキャストをかえての再演らしい。

たった1人の選手のために結成した、チアリーディング部だが、集まったメンバーはてんでバラバラ。リーダーを任されたみどりと仲間たちの奮闘記。

仮面ライダー電王@良太郎だった溝口琢矢くんの初舞台。情報を伺って楽しみにしていた。
琢矢くんは陸上部のエースで、みんなから応援される役どころ。
声変わりと背の高さに筋肉がついて、格好良く成長していた。 ほんのりと恋バナやダンスもあり、琢矢くんの新たな魅力が楽しめる。

女の子たちはとっても可愛くて、笑顔がとろけそう。キャラの個性を明確にした芝居も頑張っている。
チアの練習時はジャージだけど、紅白の衣装は可愛く、ミニスカ下と細長い脚につい目がいくw。
脚が一番長かったのは、チア顧問の先生として熱く爽やかだった坂本爽。那波隆史の厳格な佇まいも味わいがある。

応援すること、されること。くじけないこと、続けること。仲間、先生、友情。
色んなメッセージが詰まった作品で感激した。
最後の歌にも手拍子で応えた。


終演後、キャスト感謝の握手会。順番は自由みたい。
琢矢くんお目当てできました、と琢矢くん本人に告げたら、○○さんですよね?といきなり私の名前を言われてビックリ! ちゃんと調べてあるんです、と悪戯っ子のような顔でニッコリされてドギマギw。
チケットを申し込む時に琢矢くんの名前を書いたので、たぶん事前に本人がチェックしていたんだろう。席番まで知ってたので、気遣いをしてくれて嬉しかった。
サインまで頂けて、何回も握手をしてもらった。ありがとう。
これからも琢矢くんをひっそりと応援させていただきます。

今年は奇しくも、電王ダブル良太郎の初舞台の年。どちらも観劇できて良かった。
ミュージカル『DADDY LONG LEGS(ダディ・ロング・レッグズ)』を観てきた。

ジーン・ウェブスターの『足ながおじさん』をベースに、ジョン・ケアードが脚本・演出した、日本初演のオリジナルミュージカル。

登場するのは、ジャーヴィス役の井上芳雄とジルーシャ役の坂本真綾の二人。
照明を暗くして姿を映さぬ場はあるが、二人とも1幕2幕の全編をハケずに出ずっぱり。バンドの生演奏をバックに、歌と芝居だけで4年間の物語を紡いでいく。
予想に反し、これがとても素晴らしく見応えのある舞台で、何度も笑い何度も涙しながら、あたたかい思いに包まれた。
『スリル・ミー』の2人芝居よりもエキサイティングで、台詞量や歌の数ではこちらのほうが大変そう。『LOVE LETTERS』よりも男女の気持ちに寄り添えて、豊かなラブ・ストーリーを楽しめる。
今まで日本で上演されてなかったのがウソのようだ。たぶん日本人好みの舞台で、リピーターや再演もあるのではと思った。

原作よりも、名作アニメ『足ながおじさん』が記憶にあり、ストーリーを反芻しながら筋書きを追える。
ステージには沢山のケースやトランクが置かれ、中から衣装や本が次々と現れ、場面を飾って時や場所を構築する。見立ての小物の使われ方も上手い。
全30曲もあり、どれもメロディーがあたたかく、馴染みと浸透感がある。人生を生きる上でのヒントやメッセージが歌詞の中に詰め込まれていて、熱いものがこみ上げてくる。どちかかが主導のデュエットが心地良く、ハーモニーも美しい。歌を唄いながら着替えたり動いたりするシーンも多く、舞台に情感と快活を呼んでいた。

坂本真綾の歌声は綺麗で素直で、声の枯れもなくて思った以上にタフだ。まだ何色にも染まっていないジルーシャのイメージともぴったり合う。
井上芳雄は高低音を使い分ける歌声も凛々しく、美しさと力強さがある。特にジルーシャとのハモりが綺麗に決まる。
2人の芝居はとても表情豊かで、コミカルでテンポよい掛け合いも息ぴったり。
ジルーシャの髪は縛りで変化をつけ、清楚で知的な雰囲気の衣装替えもスムーズ。ジャービスは3つの帽子を使い分けるが、芳雄さんはオデコを出さないほうがいい。ズボン下を折って靴下を被せる活発なスタイルが若々しい。

ユーモアとウィットに富み、情景を思い浮かべられるようなジルーシャの手紙を呼んで、次第に彼女に心惹かれていくジャービスの心情が繊細に描かれていく。これは原作では得られないテイストだ。
孤児院で育ったジルーシャは何度も落ち込み自信をなくすが、めげずにいつも何かを発見したり立ち直ったりと逞しい。世間や社会を知り、学問や経営も学び、友情を深め愛を育み、小説を書き続けることで自立しようと成長していく。ところが富豪のジャービスは、お金以外のものは何も持っていない寂しい男。彼女の気を引いたり嫉妬したり独占しようとするが、自身を振り返り高めようとはしなかった。
ジルーシャの顔つきが少女から大人へと変わるのに比べ、ジャービスは最初こそいかつい顔と声音だったのが、どんどんジャービィ坊ちゃんに戻っていくのが面白い。芳雄さんのユニークでチャーミングな振る舞いが可愛らしく、時おり客席に真摯な目を向けられるとドキリとする。
何度も唄われる「幸せな秘密」に、普遍的なメッセージが詰まっている。ダディをお爺さんだと疑わずにいたジルーシャ。勝手な思い込みって切なくて面白い。だから人生も、切なくて面白い。

劇中で「ジェーン・エア」を読むジルーシャの姿があるが、ミュージカル『ジェーン・エア』のどろどろした恋愛劇よりも、『ダディ・ロング・レッグズ』のほうがユーモアとカラリとした甘さがあって好みかもしれない。

カテコで、スカートのボタンの一つが取れてアタフタしてた真綾さんが可愛く、彼女を笑顔でかばっていた芳雄さんもやんちゃだった。
「あしなが育英会」の募金用にジルーシャBOXを舞台に置いて、お礼の挨拶にかえた。

真綾さんとケアードといえば『レ・ミゼラブル』のエポニーヌ。
来年上演の新演出版『レ・ミゼ』のエポニーヌに、今度は平野綾が出演。真綾さんの後を継いで、綾さんがジルーシャをやる日が来るかもしれない。
ミュージカル『走れメロス』を観てきた。

招待券を頂いたので殆どタダ。
さすがに席は1階後方でオペラグラスを必要としたが、それでもS席。2階も3階も埋まっておらずチケットが売れてないことは明白。
オーチャードホールは音響はいいが、芝居をやるには箱がデカすぎたか。

「走れメロス」を書いた太宰治のすべての真実を知るための、過去と現在を行き来して紡いでいくオリジナル・ストーリー。
音楽監督の河村隆一がすべての楽曲を手がけており、諸星和己など話題のキャストも注目を集めた。
『銀河英雄伝説』で歌をセーブした河村さんに、脚本・演出の西田大輔が太宰作品の旨味と音楽創作の場を提供して、双方の利益が一致したのだろうか。
良くも悪くも、西田ワールド全開の舞台だった。西田作品の濃密さに慣れた者にはいつものテイストで、グダグダ笑いながらぐいぐいと引き込まれ、観た後にじわじわと迫るものがある。
今回はファンドレよりも、作品や役者ファンが多かったようで、初見のお客の中には薄い反応も見られ、観客間にも温度差があった。

舞台上には原稿に見立てた白い紙が何枚も散らばり、劇中では更に何度も白い紙が降ってくる。これ以上まだ散らかすのかってぐらいに雑然とした様相w。
中央に大きな扉があり、閉じると橋のようになり、開くと奥への出入口になっている。これが手動式で、まるで本を開閉するような趣にも見える。
一幕は、りんご、メロン、バナナ、みかんが登場。二幕は、酒に加えて流しソーメンをすする。総じて、飲み食い宴会が笑いのネタになっていた。

歌はロックありバラードありとバラエティ豊か。歌詞は割とストレートだが、半分位は聞き取り難かった。
一幕の河村隆一と諸星和己のデュエット曲が、対照的な空気を生み出して面白い。二幕の河村さんと玉置成実のデュエットも、男女間の違いや思いが感じられてジンときた。
河村さんが歌い上げる形は、どこか抽象的で宇宙的。殆ど黒いスーツ姿だったが、チラシにあるような和装をもっと見たかった。
諸星さんは台詞よりも歌の方が凛々しく聞こえて好感。着流しのパンクな雰囲気がよく似合う。かつてのアイドルよろしく、ローラースケートを履いたりバク転やダンスも披露したりと、健在ぶりを見せつけたw。
鈴木亜美は声は出てたが、歌い方はまだアイドル系。玉置成実の踊り方は昔と変わらないが、歌唱力はアップしていた。IZAMは独特のオネエ感とヲタ感が面白い。
振付も担当した大澄賢也は、コミカルな芝居と素敵なダンスでさすがの存在感。
2幕で活躍した川原一馬は、何と42歳の役どころで童顔がウリw。
OfficeENDLESSの田中良子は、サッパリと落ち着いた佇まい。佐久間祐人はお笑いキャラだが、狂言回し的な役どころ。
男女のアンサンブルがフル活動で、様々な役どころも兼任。女性二人のコーラスは洋風ドレスで場の雰囲気から浮いて見えた。

ある意味、太宰治の女性遍歴を辿る道でもあったりw。太宰と様々な女との関わりを通して、作家の“生”と“死”を描きたかったのだろうか。
「一生の恋」に命をかけた男たちは、ロマンティックでセンチメンタル。
対して、ダメな男を奮起させ、新たな命を宿す女たちは、現実的でドライ。
生きたいから死ぬ、生きたいから生きる。どちらも走り続けることに変わりはない。ただ、出口が見えているか、まだ見えてないかの違いだ。
ラストで美知子が小さな子供の声に呼ばれて、「私も走り続けなければね」と笑っていたのが印象的。女が走ることこそ、生を育み繋げることに他ならない。
今作品の続きで、舞台『千年女優』を薦めたい。“走る女”がテーマだからw。

それにしても西田作品は相変わらず長い(^^;。本筋とは関係ない場面やグダグダ感も否めない。
こういう話はスペース・ゼロ辺りの箱でストレートプレイでやったら、もっと分かり易く伝わるかと思う。


アフタートーク。2回目らしい。
佐久間祐人MCで、登壇者は、玉置成実、IZAM、河村隆一、諸星和己、鈴木亜美。
みんな缶ビール片手に登場してフリーダム状態。諸星さん曰く「走れエビス」ってなw。

結局フリートーク。IZAMは地毛で、河村さんも佐久間さんも天パー。実は佐久間さんは河村さんより1つ下で、客席からも「えー!?」。
どの文豪がお好き?で、玉置さんの答えに、水を飲んでた諸星さんが河村さんにモロ吹いたw。佐久間さんが拭き拭きで後始末w。亜美さんの答えは置いといて、IZAMは井伏さん以外なら許しちゃうとw。
映画でも太宰をやった河村さんは、太宰がなぜ死んだのか興味があったという。作品からエネルギーや栄養を貰って楽しんで欲しいとコメント。

半券で半額のリピーターチケットが宣伝されたが、客入ってないってこと?と諸星さんからツッコミw。初演はいいんだよと言う河村さんに、再演もあるってこと?とまたツッコミw。
最後にひと言ずつ。僕らだけにしかできない走れメロスをと、高みを目指す河村さんの言葉で締めた。

終了したのが22時15分。急いでホールを出る人が多かった。

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